C.病への備え

健康寿命を延ばすには!?ブレスロー博士の7つの健康習慣

今ある健康は当たり前?
失って、はじめてその大切さがわかると言いますが、健康はその最たるものです。

ハッピーエンドに向けて、これまでの充実した人生の仕上げをしようとする最終コーナーにおいて、数々の障害が待ちかまえています。

もう少しで、やり切ることができたのに……

健康寿命が長い人と短い人がいます。
その違いはすでに科学的に調査究明されており、延ばす方法は明らかになっていますが、それをご存知でしょうか?

ご存知なければ、その科学的事実と健康寿命を延ばす方法をブレスロー博士らの研究を紹介します。

トレードオフ:今と将来

不健康な生活とは?

精神的もしくは身体的もしくは双方が不健康な状態で生きる期間の平均は男性で約9年、女性は約12年です。
短くないと思いませんか?

健康、健康寿命、認知症の定義

🔹 WHO(世界保健機関)の健康の定義
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態。」

🔹 日本における健康寿命の定義
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」

🔹 認知症の定義(WHO国際疾病分類第10版IDC-10)

「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等多数の高次脳機能の障害からなる症候群」

トレードオフを覚悟する

なぜ、自分と家族の老後に備えないのでしょうか?
わかっていてもしない(できないのではない)理由は何ごともトレードオフであるからです。

トレードオフとは、何かを得ようと思ったら、何かを捨てなければならないということ。荷物で例えると、手は2本しかなく、手で持つことができるものには限りがあるからです。

老後に備えようとすれば、今している何かを捨てなければなりません。

しかし、将来のために今を捨てることができる人は多いとは言えません。人間は将来価値よりも現在価値を重視するからです。しかし、今あなたが持っている、あるいはしている何かを捨てない限り、健康寿命の延伸はできないのです。

今あることは確実ですが、将来はわかりません。
はたして、そのリスクが現実化するのか、程度はどうなのか?わからない中での判断です。

そこで、トレードオフで得られるものと捨てるものの比較考量が必要です。今将来を選択することによって、将来何を得ることができるのかを理屈ではなく、感じる必要があります。判断は感情が行います。

今健康であるあなたにしてみれば、健康寿命の延伸など遠い先のことですから、選択の対象にすらなっていないでしょう。

一番わかりやすいのは認知症になったあなたの姿です。精神が衰えた状況で人生を味わうことはできません。

①あなたが持てる時間と資源は有限である!
②従って、今と将来はトレードオフの関係にある!
③現在していることを捨ててまで獲得したい将来を反実仮想する

将来への投資の判断には以上の3点が必要なのですが、それを理解せず、実行していないために、不健康寿命を長い期間かこっている人が少なくないのです。

次の映画の視聴をオススメします。

あなたと家族が認知症になったら!?
将来得られることを反実仮想するためにオススメ映画

「ファーザー」アンソニー・ホプキンス主演

 

生活習慣病の犯人は自分だった!?

20世紀に人間の健康・死亡の構造は結核を中心とする感染症から、がん、脳卒中、心疾患に代表されるその名も生活習慣病に大きく変わりました。

細菌やウィルスというようなひとつの病因がひとつの病気に結びつくような単純な構造ではなく、その個人の生活習慣と遺伝的要因が複雑に絡んで、寿命の伸長とともに複数の病気や症状を引き起こすようになったのです。

その変化が意味するのは、健康を害する原因の多くは本人自身が引き起こしているという事実です!

健康長寿を望むのであれば、その犯人(原因)が自分自身であることを認識しなければなりません。

ブレスロー博士らは、カリフォルニア州アラメダ群において大規模かつ長期簡にわたって、生活習慣と疾病との関係を調査しました。

ブレスロー博士の7つの健康習慣

以下は、“Health and Ways of Living The Alameda County Study”(「健康習慣と健康 ライフスタイツの科学」森本 兼曩、星旦二 訳 HBJ出版局)から紹介します。

ブレスロー博士らは、米国カリフォルニア州アラメダ郡の7千名の住民を9年間にわたり追跡調査した結果、健康習慣から次の7つを選び、実施している健康習慣の数の多い者ほど疾患の罹患が少なく、かつ寿命も長かったことを明らかにしました。

7つの健康習慣

1.喫煙をしない
2.飲酒を適度にするか、全くしない
3.定期的にかなり激しい運動をする
4.適正体重を保つ
5.7~8時間の睡眠を取る
6.毎日朝食を摂る
7.不必要な間食をしない

そんなことは知っているよ!
当たり前だろう〜?

言葉だけを見れば当たり前のように見えますが、ブレスロー博士の健康習慣の重要性は、7千人の被験者を9年間追跡してそれらを証明した点にあります。

あなたは、7つの健康習慣のいくつを実行できているでしょうか?
この7つの健康習慣のうち1~5までを健康習慣点数として得点化します。

上記の7つの生活習慣の累積の結果、せいぜい3つ以下しかよい生活習慣をもっていない45歳の男性群は、6つ以上よい生活習慣をもっている男性群に比べて、11年も平均余命が短いことが報告されています。

調査結果を主要なデータから確認していきましょう。

1.死因と健康習慣得点の関係

3大死因であるがん、心疾患、脳卒中と健康習慣点数ははっきりと相関しています。すべての疾病において、健康習慣点数が高い、すなわち健康な生活習慣を送っている人はそれぞれの疾病における死亡率が低いのです。

2.罹患と健康習慣点数との関係

死因ではなく、生前に三大疾病を中心とする病気に罹患している割合も健康習慣得点の高い人は明らかに低いと言えます。

ブレスロー博士の社会的ネットワークと死亡・罹患調査

ブレスロー博士は、7つの健康習慣に加えて人間関係の良否が死亡率に影響を及ぼすという調査結果をまとめました。

世界中で孤独、孤立死が問題となっています。 この調査は、それらの問題を数十年前に予告していた言えるでしょう。その結果は以下の通りです。

1.婚姻状態:無配偶者が有配偶者より、死亡率が高い。

2.親しい友人、親族との付き合い:親しい友人の数、親しい家族の数、それら親しい人と会う回数からそれらの関係者との関係が疎である人は、密である人よりも死亡率が高い。

3.宗教活動:教会の活動・行事に参加していない人は、参加している人に比べて死亡率が高い。

4.その他の組織活動への参加:組織活動に参加していない人は、参加している人にくらべて死亡率が高い

以上の結果を、社会的ネットワーク指標(SNI)として4段階(Ⅰ~Ⅳ)のレベルを設定したところ、男性の最も孤立した人の群Ⅰは、最も社会的ネットワークが強い群Ⅳより死亡率が2.3倍高く、女性ではその比が2.8倍となりました。即ち、社会的ネットワークのレベルが低いほど死亡率が高いことが証明されたのです。

社会的ネットワークが弱さは以下のような影響があるとされます。

・生活に実態的な支援を受けられない。
・自分への期待役割を確認することができない。
・所属欲求が満たされない。

人間は社会的な動物です。孤独・孤立に陥らないように社会的ネットワークをつなげる努力が必要です。

3.年齢別死亡率と社会的ネットワークの関係

4つの社会的ネットワーク指標ごとにネットワークの濃淡による年代別死亡率の差が明確に表れています。いずれの項目においても、いずれの年代においても、社会的ネットワークの弱い人の死亡率が高いことがわかります。

4.死因と社会的ネットワーク指標の関係

疾病ごとに多少バラツキがありますが、全体的に社会的ネットワークの濃い人は薄い人に比べて生活習慣病の死亡率は低いと言えます。

5.罹患と社会的ネットワークとの関係

疾病への罹患と社会的ネットワークの濃淡では、女性は相関していない部分があるものの、男性は社会的ネットワークが濃い人は罹患する率が低く、相関していると言えます。

死亡率 健康習慣得点と社会的ネットワークの相関

健康習慣得点と社会的ネットワークの濃淡の間には相関が認められます。
社会的ネットワークが薄い人は健康習慣得点が低いのです。その結果、それらの人の死亡率が高まることをこの表から確認することができます。

・ 親戚や友人のほとんどいない独身者は、多くの友人や親戚のいる既婚者よりも、喫煙料や飲酒量が多い可能性があると指摘されています。

・ どんなグループ活動にも、滅多に参加しない人たちは、身体活動をほとんど行っていないかもしれません。

ブレスロー博士の調査を要約すると

🔹 健康習慣得点は、死亡率のみならず、生前の三大疾病の罹患に至るまで強く相関している。

🔹 社会的ネットワーク指標は死亡率のみならず、生前の三大疾病の罹患に至るまで強く相関している。

🔹 社会的ネットワーク指標が低い人は健康習慣得点が低く、死亡率を高める。

☞ 7つの健康習慣得点を高め、社会的ネットワークを濃くすることによって、健康寿命の伸長を期待することができる

なぜ、健康習慣と社会的ネットワークを持てない人がいるのか?

以上のように、健康寿命を延伸するために必要なポイントがわかりました。
1983年にブレスロー博士らの著書は出版されているにもかかわらず、なぜこれだけ生活習慣病が蔓延しているのでしょうか?

知っただけではできない!?

それが問題です。
すればよいことがわかっていても、やらない理由がいくつかあります。
その理由を一緒に解決する必要があるのです。

それは別稿で提案する予定です。

要約すると

🔸 ブレスロー博士の7つの生活習慣と社会的ネットワークの指標を実行すれば、健康寿命を延伸することは可能である。

🔸 できる人は即着手した方がよい

🔸 しかし、理屈でわかってもできない人が少なくない

🔸 そこで、わかっていてもできないことをできるようにする打ち手が必要である。

🔸 別稿でその方法を提案する

できる人は健康習慣と社会的ネットワークを意識して行動をスタートしてください。
わかってもできない人は続編をご期待ください。