A.前向きの人生

エド・ディーナーの「人生の満足度スケール(SWLS)」にフランクル的解釈を加えると違った人生が見えてくる!?

突然あなたの母親が現れて、
「命がけで産んで、苦労してあなたを育ててあげたのだけど、
あなたはその人生にどのくらい満足しているの?

 100点満点で評価してちょうだい!」

と言われたら、何点だと答えますか?

そして、続いてあなたの母親が

「なぜ、あなたの人生の満足度は○○点なの?その理由を教えてちょうだい!」

と聞かれたら、何と答えますか?
母親からのこの2つの質問に答えられるでしょうか?

この2つの質問に答えるのは容易なことではないと思います。
なぜかというと、普段から人生の満足度をたまにでも評価している人は少ないからです。

 

学習やビジネスではPDCAが当たり前とされていますが、人生のPDCAを回すのが上手な人はあまり多いとは言えないようです。

人生の満足度の測定にはエド・ディーナーらが開発した有名な「人生の満足度スケール(SWLS)」があります。このスケールで自分の人生の満足度を測ったことがありますか?

「人生の満足度スケール(SWLS)」とは?

正式名称  SWLS:Satisfaction With Life Scale(生活満足度尺度)

SWLSは、「人生に対する主観的な満足度」をシンプルに、かつ信頼性の高い方法で測定するために設計されました。

SWLSをやったことがない人は、お試しください。
オレンジ色の「早速やってみる!」ボタンを押してください。
下まで見えない場合はスクロールしてください。

 

やってみて、感想はいかがでしょうか?
実績のあるテストですが、やってみると次の2点に違和感があることに気づきます。

SWLSに対して感じる違和感

1️⃣ なぜその評価になったのか?評価の背景と基準

SWLSは5項目の評価を通じて数値を出しますが、なぜその得点を付けるのかの理由までは掘り下げません。あくまでも、なんとなくなのです。

2️⃣ 意味の感覚(Purpose/Meaning in Life)の欠如

「満足している」ことは必ずしも「意味を感じている」ことではありません。SWLSには意味の感覚が含まれていません。フランクル的観点では、人生の困難や逆境の中にも意味を見出す力を重視します。

 

「人生の満足度スケール(SWLS)」とは?

  • 開発者:エド・ディーナー(Ed Diener)博士を中心とする心理学者グループ
  • 開発年:1985年
  • 所属:ディーナー博士は「主観的幸福感(Subjective Well-Being, SWB)」研究の第一人者であり、”Dr. Happiness”の異名で世界的に知られる人物

特徴的なポイント

特徴内容
測定対象幸福感のうち「認知的側面(人生の評価)」に特化
質問項目たったの5項目で構成され、回答の負担が少ない
回答形式1(まったくそう思わない)~7(非常にそう思う)の7段階リッカート尺度
合計得点範囲最低5点~最高35点(高いほど人生満足度が高い)

 

SWLSの利用実績

以下のように世界中で活用されているテストです。

項目実績規模
被引用数7,400回以上(開発論文)
世界的な採用約60か国以上、多言語バージョン
総サンプル規模数万人単位(例:メキシコ13,220人、青年22,710人)
日本での採用国調査・国内研究で数千人規模~

 

SWLSの評価

SWLSは5問の設問をそれぞれ7段階で評価します。
結果としての得点は最低が5点、最高が35点となります。

SWLSの点数を見たあとに感じる違和感とは?

なぜ、「人生の満足度評価」点数を見てもスッキリしないのか?

「この点数って…高いの?低いの?なんだかピンとこない」

あなたがSWLS(生活満足度尺度)に答えて出た点数は、
たとえば「25点」や「18点」「12点」といった数字かもしれません。

でも、それを見てこう思った方はいませんか?

「で? これって、どう受け止めたらいいの?」
「なんか腑に落ちない…」
「自分の人生って、こんなふうに採点してよいのかな?」

しかし、この “モヤモヤ”や“違和感”こそが、貴重なスタートラインとなのです。。

SWLSの得点に違和感が生じる3つの理由

評価者自身の理想人生が不明確

SWLSが問うているのは自分か設定した理想の人生との比較です。

でも

🔸「理想の人生」って、そもそもどんなもの?
🔸 7段階の評価をどのように付けるのだろう?

5つの設問にはっきり答えられる人は、実は多くありません。
というのは、SWLSの前提は、理想的な人生像を明確に持って生きていることだからなのです。理想的な人生の基準があって、7段階の評価がはじめて付けられるのです。

つまり、何を基準に点をつけたのか自分でもわからない人が少なくないのです。

他人との比較で答えてしまっている

本当はあなた自身の満足度を測るはずなのに、無意識にこう思っていませんでしたか?

「まぁ、周りに比べたらそこそこ幸せかも」
「この歳でこの仕事なら…悪くないよな」

☞ これは 自分の理想ではなく、世間相場との比較です。
そのため、出てきた点数にも 自分ごととしての納得感が持てない のです。

過去の採点にとどまってしまう】

SWLSは「これまでの人生はうまくいっていたか?」という問いです。

でも、本当は私たちはいつもこう考えています:

「これから、どんなふうに生きていこう?」
「過去はともかく、今から何ができる?」

☞ つまり、未来への視点が抜けているから、点数を見ても磁針のないコンパスのような気持ち になるのです。

「じゃあ、どうすればよいと言うんだ……」

SWLSへの違和感は次の問いへの入り口

このように、SWLSの点数を出しただけでは何の解決にも繋がりません。
SWLSは出口ではなく、「人生に何を期待するかではなく、人生があなたに何を期待しているのかを問うべきだ」の入口としての重要な役割を果たしているのだと言えます。

そこで、SWLSにフランクル的な解釈を加えたいと思います。

フランクル的解釈ー「満足」に「意味」を加えると

ヴィクトール・フランクルはアウシュヴィッツを生き延びた精神科医であり、心理学者です。彼はこのように述べています。

「人生に何を期待するかではなく、人生があなたに何を期待しているのかを問うべきだ」

SWLSは、あなたが人生に問うスタイルであるのに対して、逆に人生があなたに問うスタイルがフランクル的解釈です。フランクル的解釈はSWLSの3つの課題をカイゼンします。

①理想の人生の基準を明確にする
②他人との比較ではなく自分自身の価値観に応じて
③過去のレビューだけでなく今後の人生を理想的なものにする

SWLSの問いにブレイクダウンした問いを太字で追加しました。
さらに、フランクル的な問いを青字で追加しました。

SWLSの評価をする際に、フランクル的解釈を加えると評価はどのように違ってくると思いますか?

SWLSの設問エド・ディーナー的解釈

(本来の趣旨)

フランクル的解釈

(人生からの問い)

Q1.ほとんどの点において、わたしの人生は理想に近い自分の人生を振り返ったときに、理想像にどの程度近づけたかという自己評価

・理想的な人生とは具体的にはどのようなものなのか?

・その理想的な人生において達成した理想は何か?

・あなたは「人生があなたに望んでいた姿」に近づいているか?

・人生の理想はあなた自身が定めたものか?

・これから追求する理想は何か?

Q2.私の人生の状態は極めてよい現時点での人生の状況(健康・仕事・人間関係など)への満足度の総合評価

・極めてよいとはどのような状況か?

・人生は今、あなたに「この状況で何ができるか」と問うているのでは? 

・状況が良い/悪いではなく、それにどう応えるかが意味では?

Q3.私は人生に満足している現在の自分の人生に対してどれほど主観的に納得しているかを問う

・何に対して満足しているのか?
・満足し足りないことは何か?

満足しているか」ではなく、「いま人生から何を託されていると感じるか」。満足より意味への応答を重視する視点
Q4.これまでのところ、人生に望むものは手に入れた欲求の達成や目標の実現度を通じた達成感の確認

・望んでいたこととは何か?

・手に入れたものは何か?

・手に入れてないものは何か?

人生は、あなたに何を残せと求めていたか? 望むものではなく、託された使命に気づいているか?
Q5.自分の人生をやり直せるとしても、変えたいことはほとんどない過去への後悔の有無・人生の軌跡への肯定度を問う

・変えたくない自分とはどのような自分か?

・変えたい自分はどのような自分でどのように変えたいのか?

過去の出来事からあなたは何を学び、それをこれからどのように活かそうとしているのか?今からどのような意味を生み出すのか?

 

SWLS vs. フランクル的解釈

SWLSとフランクル的解釈の差違は以下の通りです。

項目SWLS

満足(Satisfaction)

フランクル的解釈

意味(Meaning)

評価対象過去~現在の人生現在~未来の人生
測定視点自己理想とのギャップ存在(生きていること自体)的な価値とつながり
理想の基準無意識的な他者比較自分にとっての意味を問う導線になる
感情の傾向快・不快納得・使命感・貢献感
結果点数評価で終わるこれから何を為すかの出発点になる

 

満足(Satisfaction)と意味(Meaning)の違い

🔹 満足(Satisfaction)とは?
SWLSで測定される「人生の満足」は、自分の人生が望んでいた通りかどうかという評価
つまり、「人生はこうあってほしかった」という理想との比較です。
したがって、

・安定した生活
・経済的な成功
・人間関係の充実

などが理想通りであれば「満足している」と答える人が多くなります。

🔹 「意味(Meaning)」とは?
「この人生には意味があった」と感じられるかという、もっと内面的で存在的な問いです。

満足が喜ばしいことに対する評価であるのに対して、たとえ苦労や苦痛が多くても、
「この体験には意味があった」「誰かのためになった」と思えれば、
人生を意味あるものと受け止めることができます。

・介護で自由がなくなった → 満足度は低くても、意味を見出している
・高収入の仕事を得た → 満足度は高くても、意味を感じられないこともある

過去の評価 vs. 未来への意味

🔹 SWLSは「過去の振り返り」的な評価
SWLSで問われるのは、以下のような“過去~現在”に対する主観的評価です:

・「今までの人生に満足している」
・「自分の人生は理想に近い」

これはいわば、過去の道のりの採点です。

🔹 意味」は未来に向けたコンパスにもなる
フランクルが強調したように、
「人生に意味を問うのではなく、人生から意味を問われている」という視点では、
「これからどう生きるか」「この先、何を大切にしていくのか」という未来志向の問いが中心になります。

つまり、「意味」は

・今後の人生をどう使うか?
・この先の時間にどんな価値を込めるか?

という、未来への自発的な選択と行動の源でもあります。

なぜ自分への「問い」が人生の意味を見出す鍵なのか?

SWLSもフランクル的解釈も「問い」です。
人生の意味は、自分自身への問いからしか見つけることができません。
「問い」が果たす役割を考えてみましょう。

🔸 問いは惰性を破るから
いつも通りで生きる型にはまった生き方へのチェックとなるからです。

🔸 問いは無関心を止めるから
関心のないことに注意を向ける力があるからです。

🔸 問いは無知から既知への転換点となるから
賢明な人でも知らないことを欲しがることはできません。問いは無知を気づかせてくれるからです。

🔸 問いに対する答えは自分で決めなければならないから
聞かれた以上答えなければなりません。
答える以上その答えを自分で考えなければなりません。
考えた以上自分らしい答えをしたくなるからです。
自分らしい答えの選択が主体性であり、一貫性だからです。

🔸 問いに対する答えは人によって違うから
「理想の老後」「幸せ」「後悔しない人生」…
誰かの答えは、あなたの答えではありません。
だからこそ、自分自身に「自分にとってはどうか?」と問う必要があるからです。

求められる自分への「問い」

誰かの人生をなぞるのではなく→ あなた自身の人生を選ぶために
決まった答えを探すのではなく→ あなたなりの答えを見つけるために
いま答えが出なくてもいい→ 問いを持つこと自体が意味を生む

自分に対してよい問いを発することが理想的な人生、意味のある人生に必要です。あなたはどのように自分に対して問いを発していますか?

 

理想的な人生、意味のある人生への問いを自身に発しないリスク

「問い」なくして、「正解」はありません。
「問い」なくして、「選択」はありません。
従って、「問い」がなければ、「行動」はないということです!

「行動」のない人生はどのようなものなのでしょうか?
自分自身への問いを忘れて型にはまった人生を繰り返すリスクを想像してみてください。

忙しさが「問い」を奪う

ではなぜ、自分自身に問いを発することができないのでしょうか?

自分自身に問いを発することができないひとつの原因は忙しさです。
「忙」という漢字は心を失うと書きます。

人は何もしないことには耐えられません。ですから、基本的には以下のように忙しい状態を好みます。しかし、これらは真剣に人生に向き合うことへの麻酔の役割を果たしていることに注意が必要です。
✅ スケジュール表に予定が埋まっている状態
✅ 誰かに頼られている状態
✅ 果たすべき役割がある

忙しそうにしている人のリスク

1️⃣ 忙しさは、自分自身への問いから逃避するための一番都合の良い口実となる
2️⃣ 自分自身に問いを発して内省する時間を持つことができない
3️⃣ 優先順位を誤りがち。重要度(問い)よりも緊急度を優先してしまう。
4️⃣ 忙しさと意味ある行動を取り違える 「意味があるから頑張る」のではなく、「頑張ることで意味があると思い込む」

あなたは回し車の上を同じ場所で走っていませんか?

自分で自分に問いを発する方法

理想的な人生、意味のある人生にするために必要な問いを全て知りたいと思いますか?
それが手に入るとしたら、いくら対価を支払ってもよいと思いますか?

ひとつの候補を紹介します。こちらからご覧ください。