B.セカンドライフプランニング

なぜ、定年後(老後)の設計(ライフデザイン)ができないのか?

「どっちかな……?」

登山道で、ひとりの登山者が立ち止まりました。

右へ行くべきか。
左へ行くべきか。

この登山道は登ったことがありません。

✅ 地図はありません。
✅ コンパスもありません。

後ろから登って来た人に聞きました。

「山頂は左の道ですか?」

後ろの登山者は、地図とコンパスを確認しながら答えました。

「そうだけど、地図とコンパスはないの?」

「もってないです……」

「無謀だよ!地図もコンパスも持たずにこの山を登るなんて……」

人生は山登りに例えることもできますが、実際の人生でも同じことをしている人が少なくありません。

定年後(老後)は、誰にとっても未経験の”山”……

✅ 健康
✅ お金
✅ つながりー孤独
✅ 生き甲斐

など、経験したことがないテーマがたくさんあります。
それにもかかわらず、

「まだ先だから……」

「なんとかなるはずだから……」

「今は困っていないから……」

と、地図もコンパスも持たないまま進んでしまう?

あなたは地図もコンパスも持たない人から山登りを誘われたら、一緒に行きますか?
人生も登山に例えられることがありますが、定年後(老後)の地図とコンパスは用意しているのでしょうか?

 

多くの人が、定年後(老後)に不安を感じているにもかかわらず、人生設計をしている人が少ないのはなぜか?

生命保険文化センター「生活保障に関する調査(2025年度)」によると、老後生活に対して「不安感あり」と答えた人は、83.2%にのぼるにもかかわらず、具体的な生活設計を立てている人は、39.5%しかいません。

つまり、不安はあるが、設計はしていないという状態が起きています。
不安であるにも関わらず、考えない!?

なぜ人は、不安を感じているにもかかわらず、定年後(老後)の人生設計をしないのでしょうか?

定年後(老後)を設計しない理由

その1:見えない将来は、設計できない 

生命保険文化センターの調査では、生活設計を立てない理由として「将来の見通しを立てることが難しいから」が大きな理由として示されています。
設計したくないのではありません。将来が見えないから、したい人でも設計することができないのです。

登山でいえば、山頂までの距離も、危険箇所も、休憩場所も、下山ルートもわからない状態で登っている状態です。

これでは、どう登ればよいかわかりません。
定年後(老後)も同じです。定年後(老後)は、誰にとっても未経験の未来です。
賢明な人でも知らない未来を設計することはできません。

その2:ダチョウスタイル――不安だから見ない

将来が見えないと、人は不安になります。そして、不安になると、人はその対象を見ないことで、一時的な心理的安定を得ようとします。

これが「ダチョウスタイル」です。
危険を感じると、頭を砂に埋めて見ないふりをするダチョウのように、不安から目をそらしてしまうのです。

ダチョウと同じように人は、
「まだ先だから……」
「なんとかなるだろうから……」
「今を大切にしたいから……」

と、自分を納得させて見ない選択をしてしまう。このダチョウスタイルが、老後設計を先送りしてしまう理由のふたつ目です。

その3:人は「未来の自分」を他人のように感じているから

アメリカの心理学者ハル・ハーシュフィールドは、人が定年後(老後)への準備をしない理由について興味深い研究を行いました。

彼の研究では、人は、「未来の自分」を、今の自分とつながった存在として、十分に実感できていないことがあると指摘しています。

つまり、10年後の自分、20年後の自分、定年後(老後)の自分に対して無関心なのです。どこか“別の人”のように感じてしまうのです。

🔔 現在の自分にはお金を使う。
🔔 現在の自分には時間を使う。
🔔 現在の自分の楽しみは大切にする。

のに対して、

😳 未来の自分には、無関心で、
😳 未来の自分には、投資しないで、
😳 未来の自分には、思いやりをかけない

老後設計をしない理由の3つめは、この「未来の自分との距離」にあります。

ハーシュフィールドの実験

老化した自分を見ると、人は変わる。
ハーシュフィールドらは、被験者に年齢を進めた自分の姿を見せる実験を行いました。

研究では、将来の退職後資金のために、現在の収入のうちどれくらいを配分するかを調査しました。

第一のグループは、没入型バーチャルリアリティや意思決定支援ツールを使って、リアルに生成された「未来の(老後の老いた)自分」の姿をみせてから、投資を判断させました。第二のグループは、今の自分のイメージのまま投資の判断をさせました。

その結果、未来の(老後の老いた)自分を見た参加者グループが給与の6.17%を退職後資金に配分したのに対して、もうひとつの現在の自分しか意識しないグループの投資割合は給与に対して4.41%だったのです。

未来の(老後の老いた)自分を見た参加者グループの方が、現在の自分しか知らないグループに比べて将来受け取る年金への投資の割合が大きくなったのです。

 この調査結果が示すのは、人は知識だけで判断した場合と未来を感情的に実感したときの判断は大きく異なるということです。すなわち、「未来の(老後の老いた)自分」を体験したことによって感情が動き、未来の自分により好ましい判断を行ったのです。

老後を疑似体験すると何が起きるのか

未来の自分が今の自分になる

老後を疑似体験すると、無関心だった未来の自分を”自分ごと”として感じられるようになるのです。
今の自分のこととして、関心が高まり、未来の自分に対して、時間、手間、お金をかけようとします。

介護が不安であれば、体験によって次のように漠然とした不安の中身を具体化することができます。

👉 自分が介護される具体的な状態
👉 誰が自分を介護してくれるのか
👉 どこで介護を受けるのか
👉 介護に必要な費用はいくらか
👉 自分が介護をする家族は誰か

お金が不安も同様に中身を具体化することができます。
孤独が不安も同様に中身を具体化することができます。
生き甲斐が不安も同様に中身を具体化することができます。

不安 → 具体的なテーマ → 投資をすべき収穫

未来の自分を疑似体験すると、不安が具体的なテーマに替わり、それぞれのテーマはやっかいものではなく、手間をかけて育てる収穫と変わるのです。

🌿 健康に投資する。
🌿 家族などとの人間関係を整える。
🌿 お金を準備する。
🌿 生き甲斐を育てる。

これは、未来の自分への投資です。
理屈で知るだけではダメです。感じなければ……

では、どうしたら未来を疑似体験することができるかです。

 

定年後(老後)を自分らしく生き甲斐をもって生きるためのLIFEデザインワーク

定年後(老後)を考えることは、不安になるためではありません。
未来の自分を知り、今の選択を変えるためです。
LIFEデザインワークは、定年後(老後)を疑似体験し、未来の自分を“他人”にしないための入口です。

 

【LIFEデザインワークとは?――入口としての考え方を見る】
人生の設計のしかたについて学びたい方は、こちらでLIFEデザインワークの前提となる考え方整理していますので、ご覧ください。