「この不死人間の姿ほど恐ろしいものを、私はまだ見たことがない。
こういった実情を見聞すると、不老長寿を求めていた私の激しい願望もがっくり萎えてしまった。 あんな生涯から逃げ出すためなら、いかなる暴君が考案したいかなる死刑でも、喜んで受けたいとさえ思った。」(「ガリバー旅行記 」スウィフト作 平井正穂訳」)
ストラルドブラグを知っていますか?
ジョナサン・スウィフトが書いた「ガリバー旅行記」に登場する不死人間ですが、あなたの身近なところにもいるかもしれませんよ。ストラルドブラグ的な生き方をしている人が……
ガリバーの4回にわたる航海の物語の中で、その第3航海記に天空の島ラピュタを訪問した後にストラルドブラグが住むラグナル島にたどり着きます。
子ども向けの「ガリバー旅行記」は第2航海記までであることが多いので、「ガリバー旅行記」は読んだことがあるという人でも知らない人は少なくありません。スウィフトの風刺に富む大人向けの「ガリバー旅行記」改めて読んでみたらいかがでしょうか。
不死人間 ストラルドブラグ
ラグナル島にたどり着いたガリバーは、 ラグナグ人からこのように問われました。
「わが国にいるストラルドブラグ、つまり、不死人間を1人でも見たことがあるか。」と
極めて稀に左の眉毛のすぐ上、赤くて、丸い斑紋を持った子供が生まれることがあり、その斑紋こそ、その子が絶対死なないと言う正真正銘の印しであると聞かされたのです。
ガリバーはそれを聞いて、ストラルドブラグはなんと幸福な人間なのだろうと思いました。
「 人間に必ずつきまとうあの禍から生まれながら解放され、したがって、死に対する恐怖が精神にもたらす暗澹たる、重圧感を感じることもなく、心を常に何の屈託もなく、自由に遊ばせておくのできる、素晴らしい不死人間こそ、まさに世界に例を見ない幸福な人々と言わなければならない。」
そこで、早速、ラグナル島のある紳士にストラルドブラグを紹介してもらったところ、ストラルドブラグから逆に次のような質問を受けたのです。
「 もしも、あなた自身が、運命の巡り合わせで不死人間に生まれついたとしたら、どんな生涯を送ろうと心に決めておられたのであろうか」
ガリバーはこのように答えます。
第一に、世界一のお金持ちになることができる。
第二に、世界一の大学者になることができる。
第三に、歴史について、一つ残らず、綿密に記録をとっておき、自分が知識と知恵のいわば生きた宝庫となることができる。
その他縷々と、不死人間として生まれついた場合にできることをストラルドブラグに語ったのです。
それに対してストラルドブラグが次のように答えました。
「このラグナグ島では、長寿を望む気持ちがあまり強くない、絶えずストラルドブラグという不死人間の見本を目の前に見せつけられているからだ。」
「老齢ともなれば必ずつきまとう、様々な不幸の最中にあって、問題は長寿をどう生き抜いていくかである。なぜなら、そういった老齢につきものの、惨憺たる状況に陥ってもなお、不死でありたいと望むものはまずいないからである。」
そして、ストラルドブラグを紹介してくれた紳士がストラルドブラグについてこのように教えてくれたのです。
- ストラウドブラグはおおよそ30歳までは、普通の人と同じように生活するが、その年齢を超すと、次第に憂鬱になり、意気消沈しはじめる。
- 80歳ともなれば、他の同年輩の者達と同じように、老人につきもののあらゆる愚かさやもろさを暴露するばかりでなく、絶対に死なないと言う前途を悲観して、さらに多くの弱点をさらけ出すようになる
- 頑固で、気難しくて貪欲で、不機嫌で、愚痴っぽくて、 嫉妬ぶかくなり、おしゃべりになる。
- 嫉妬の対象は、若い連中の放蕩三昧な生活であり、老人連中の死(死ねない自分に対して)
- 記憶は、若い時とか、壮年時代に見たり、聞いたりしたこと以外は何一つ覚えていない。
- 80歳を過ぎるやいなや、彼らは法的には死んだものとみなされ。すなわち、生活費としてわずか一部を残して、その他の財産は全て跡取りが相続する。
- 90歳に達すると、歯が欠け、頭髪も抜けてしまう。食事の味の良し悪しなど分からないようになり、手に入るものなら、何でも味も食欲もお構いなしに、だだ飲み食うだけとなる。
- 病気にもかかるが、かかったら、最後、重くもならず、軽くならず、ただダラダラと一定の症状が続くだけ。
- 読書の楽しみも味わえない。つまり、記憶力が全然役に立たないので、わずか1つの文章も、初めから終わりまでまともに読み通せない。
ラグナル人の紳士が説明するストラルドブラグに似た人が一部を除いて現代の日本にもたくさんいるように思いませんか?
不死人間の実態を知ったガリバーは
「この不死人間の姿ほど恐ろしいものを、私はまだ見たことがない。
こういった実情を見聞すると、不老長寿を求めていた私の激しい願望もがっくり萎えてしまった。 あんな生涯から逃げ出ためなら、いかなる暴君が考案したいかなる死刑でも、喜んで受けたいとさえ思った。」と思ったのです。
作者ジョナサン・スウィフトの老後
ガリバー旅行記は1726年に出版されましたが、第三航海記は、1725年頃に書かれたものだと考えられています。スウィフトは500年も前に超高齢社会の人間を風刺していたのです。
スウィフトは「我、老齢になりし時」と銘打った文書を1699年(32歳)に書いていました。若い頃から老後に関心があったようです。彼は終生メニエール病に悩まされていましたが、その影響があったかもしれません。
「我、老齢になりし時」
・若い女を娶るなかれ
・若い仲間を本人がそれを望まない限り傍に引き留めることなかれ
・同じ話を繰り返すことなかれ
・ヨタな、ムダ口の多い召使いの話に耳を傾けることなかれ
・あれこれと口を挟み過ぎることなかれ
・若かりし日の二枚目振りおよびいかに女にもてたかを自慢することなかれ
・子どもを好きになることなかれ、あるいは子どもを我が身に夢夢近づけることなかれ
スウィフトは1745年10月19日に一夜にわたる痙攣の後、午後3時に静かに息を引き取りました。78年の生涯は現在の日本人男性の平均寿命さえも上回っており、当時としては長命だったと言えるでしょう。
しかし、スウィフトの生涯の最後の数年は、知性のほぼ全面的な消滅状態であったと書かれています。 彼がホワイトウェイ夫人に宛てた1通の手紙が彼のその状態を示しています。死の5年前に書かれた手紙であるとすれば、死ぬまでのその後の5年間の生活の様子を推定することができます。
ホワイトウェイ夫人に宛てた1通の手紙
「 昨夜は一晩中惨めな気持ちで過ごしました、そして今日は耳が極めて遠く、苦痛でいっぱいです。私はあまりにもボケ、混乱してしまっており、自分が身体と精神の両面において、陥ってる無念さを表現できません。私が言えるのは、痛みは耐え難いものではない、と言う事ですが、しかし1日ごとに、1時間ごとにそのなるような気がします。どうか、あなたの、そしてご家族の健康状態をお聞かせください。私は自分が書いている言葉がほとんど1つも理解できません。私に残された日は極めてわずかであり、しかもそれらは悲惨なものに違いありません。私がヘマな間違いをしていないすれば、今日は1740年7月26日の土曜日です。 私がもし月曜日まで生き延びられたら、あなたに、おそらくこれが最後になるであろうけれども、お目にかかりたいものです。」
スウィフトは自分の老後を予期してストラルドブラグを描いたのでしょうか。
不死人間になりたいか?
あなたは、ストラルドブラグとして生まれたいと思いますか?
Happy Ending カード体験会でこのように質問すると、ほとんどの人が不死人間にはなりたくないと答えます。
しかし、Happy Ending カードNo.A-2「悔いのない人生」を見せてYESかNOかを尋ねると、ほとんどの人はNO!即ちまだ死にたくないと答えるのです。
不死はごめんだが、すぐ死ぬのもごめんだということなのです。
期限(締切)のない不死人間ストラルドブラグが陥る誤謬
「死」という縁起の悪いことから逃れられるにもかかわらず、不死人間にはなりたくないという人が言うその理由は何でしょうか?
・老醜をさらしたくない
・記憶がなくなって生きていても楽しくない
・味がわからないのであれば、食事をしてもしょうがない
・尊厳がない etc.
以上はごもっともですが、それはストラルドブラグ的になった後のことなのです。
ここで指摘しておきたい問題は、ストラルドブラグ的になる前にあります。
🔥 期限がないと行動を始めない
人間が行動を開始するタイミングは期限がコントロールしているのです。
期限がなければ着手はなく、ボーッとしているのです。
あなたにも、身に覚えがありませんか?
期限がスタートをコントロールする例
・サッカーの試合は前半45分、後半45分 計90分で相手側より多くの得点を稼ぐ必要があります。
・バスケットボールの試合は1クール10分、4クール40分で相手側よりも多くの得点を稼ぐ必要があります。
スポーツはホイッスルが期限が迫っていることを分かりやすく伝えるので、選手は一斉にスタートします
・農作業や建築現場で働く人は日が暮れる前までにその日の作業を終えなければなりません
・サラリーマンは終業時刻までに仕事を終えなければなりません
・社長は決算月までに予算を達成しなければなりません
・小学生は夏休みの宿題を二学期の初日に提出しなければなりません
ストラルドブラグ的な生き方の問題点
👉 期限を意識する必要がないので、行動しない。
← いつでもできる!そのうちやろう!
👉 行動しない結果を将来後悔することになる
ストラルドブラグ的な人間にならないための3つの問い
現代の日本において、不死人間ではないにもかかわらずストラルドブラグ的に生きている人はいないでしょうか。
あなたはどうですか?
左の眉毛のすぐ上、赤くて、丸い斑紋がありませんか?
スウィフトが「ガリバー旅行記」を出版した300年前のイングランドの平均寿命は35歳程度だったと言われているのに対して、日本人の平均寿命は84歳(2021年)。平均寿命はスウィフトの時代に比べて50年伸びています。
寿命が50年伸びるを裏返して表現すると、不死の時間が50年間増えているということになります。
現代のストラルドブラグにならないための3つの問い
Q1. すでにストラルドブラグ的な人生を送っていないか?
Q2. 今はそうではないとしても、いずれストラルドブラグ的になる可能性がないか?
Q3. ストラルドブラグ的になる前にやっておきたいことがあるか?
なぜ、ストラルドブラグは愚痴ばかりこぼしているのでしょうか?
やり残したことがなければ後悔はないはずです!
彼等は30歳までは普通の人間とほぼ同じ生活を送ることができたのです。
30歳を超えてストラルドブラグ的になる前に、やり残すと後悔することを実行しなかったからではないでしょうか?
スウィフトの時代の平均寿命が35歳であったことを考えると、普通の人であっても普通の生活を送ることができたのは30歳前後まであったかもしれません。
現代の人間がストラルドブラグ的にならずにいられるのは何歳くらいまででしょう?
それは人それぞれだと言えますが、30歳ではないことは確かです。
ストラルドブラグ的
🔸 不死人間ではないにもかかわらずストラルドブラグ的に生きていないか?
🔹 不死人間ではない以上、時間には限りがある。
🔹 時間が限られているとすれば、何もかもはできない。
🔹 優先順位をつける必要がある。
🔹 優先順位は着手の順番
🎯しかし、優先順位をつける前に必要なことがあります。やり残したくないことが何なのか?です。
ストラルドブラグ的な人生を送るか否かはあなた次第です。
順番を考える前に、まずはやり残したくないことをリストアップすることです!
どうやって、やり残したくないことをリストアップするのか?ですって?
もちろん、Happy Ending カードを使ってです!😊
ガリバーはラグナル島を後にして日本に向かいます。
ガリバーは日本でもストラルドブラグを発見するでしょうか?
「ガリヴァーとオリエント」千森幹子著
ストラルドブラグについて詳細に解説が記載されています。