何をするにしても人間には動機というものがあります。
何気なくしていることについても無意識には動機があります。
老後のライフプランを創る際に自分自身の動機をちゃんと理解しておかないと、間違った目的地を指向してしまうかもしれません。
たどり着いてみたら、こんなところに来るつもりはなかった……なんてことに……😫
マズローの欲求5(6)段階説とは?
ちょっとした質問に答えてみませんか?
Q1. 「マズローの欲求5段階説(または6段階説)」をご存じですか?
A.はい、知ってます!
B. 名前だけ聞いたことがあります
C. まったく知りません
👉 A〜Cどれでも大丈夫です
今日はマズローの欲求5(6)段階説を糸口にして、特に後半生(老後)の欲求について紐解いてみましょう。
Q2. あなたはいま、どの段階にいると思いますか?
以下のうち、一番近いと思うものを選んでください
1.体調の管理や生活で、とにかく今日を乗り切るのが精一杯。
2.お金や住まいなど、将来の生活が漠然と不安。
3.話し相手がほしい。家族や周囲との関係が気になる。
4.人に求められたい。存在感を示したい。
5.後悔なく人生を終えたい。やり残したことが気になっている。
6.誰かの役に立ちたい。自分がいた意味を誰かに残したい。
👉 どれを選びましたか? それが、あなたが今いる欲求の段階のヒントです。
マズローの欲求5(6)段階説とは
名前は聞いたことがあるかもしれません。
マズローの欲求5(6)段階説
一度は見たことがありませんか?このピラミッド型の図を

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、1943年、人間の行動や意識は「5つの欲求段階」によって動かされていると提唱しました。 晩年にはさらに1段上の「第6段階=自己超越の欲求」を追加し、最終的に6段階モデルとして語られるようになります。
欲求の段階とは?
人間は、このピラミッドを下から上へ順に欲求を満たしていこうとします。
下位の欲求ほど緊急性が高く、無意識かつ容易に感じますが、上位の欲求は下位の欲求を満足しないと欲求として感じることがありません。
たとえば… 「眠い」「お腹が空いた」(第1段階)はすぐわかりますが、「自分はどうありたいのか?」(第5段階)なんて、滅多に考えませんよね?「眠い」「お腹が空いた」(第1段階)をクリアすることができない状態で、「自分はどうありたいのか?」(第5段階)という欲求は余裕がないために涌いてこないのです。
逆に満たされた欲求は欲求としては消滅します。
住まいを確保するという欲求は住宅を購入した人には消滅してしまいます。そして、住まいという欲求が消えた結果として、住宅以外の新たな欲求が芽生えてくるのです。
あなたの中に髙次の欲求はすでに存在していますが、高次の欲求がいまだに頭をもたげていないかもしれないのです。
「気づいていない欲求」が人生を左右する?
マズローはこう言っています。
「人は、自分が飢えていたことを、満たされたときにはじめて飢えを理解する」
このような想いが潜在的に自分にあることに気づかないで過ごしていると、気づいたときにはもう遅かった、ということになりかねません。
【高次の欲求に気づくのが遅れて後悔するケース】
🔥 もっと「ありがとう!」と言われたかった
🔥 いつかはやろうと思っていた夢を何ひとつやらなかった
🔥 もっと自分らしく生きればよかった
🔥 家族をもっと大切にすればよかった
🔥 家の整理も遺言も書くことができなかった
では、どうすれば「気づく」ことができるのでしょうか?
あなたが今いる階層をチェックリスト形式で見える化し、 そこから今のあなたに必要な欲求を導いていきます。
あなたが今いる、欲求の段階判定
6つの欲求の段階をそれぞれ5つの問いをチェックすることで、あなたが今いる欲求の段階を判定します。チェックが多くついた段階が、あなたのいる段階です。
STEP1:チェックリストに答えてみましょう
あなたがマズローの欲求の6段階のどこにいるかを判定する参考として、それぞれ5つの問いに応えてみてください。そして、あなたがどこの欲求段階にいるかを判定してください。
生理的欲求(第1段階)
問い | レ | 意味 |
| 生活のリズムが不安定である | □ | 生活習慣の見直し |
| 食事・睡眠・排泄に不調や不快がある | □ | 基本的生理ニーズの未充足 |
| 生活リズムが整っておらず慢性的に疲れている | □ | 休息不足 |
| 健康診断や服薬管理ができていない | □ | 健康管理の不安 |
| 病気や加齢による身体的変化に不安がある | □ | 身体機能の変化への不安 |
👉 チェックが多いあなたは、「身体の調子が最優先」。生きる基盤の回復が今の課題かもしれません。
安全の欲求(第2段階)
| 問い | レ | 意味 |
| 今後の生活資金について不安を感じている | □ | 経済的不安定 |
| 災害時の備えが十分ではない | □ | 防災・安全対策の不足 |
| 介護・医療の備えが不十分だと感じる | □ | 健康への備え不足 |
| 仕事や収入が安定していない | □ | 雇用や収入の不安 |
| 日常生活でトラブルに巻き込まれる不安がある | □ | 法的・物理的安全の欠如 |
👉 チェックが多いあなたは、「将来の安心を築くこと」が重要な段階にいます。
所属と愛の欲求(第3段階)
| 問い | レ | 意味 |
| 気軽に連絡できる友人や家族が少ない | □ | 人間関係の希薄化 |
| 相談できる相手がいないと感じることがある | □ | 情緒的な孤立 |
| 居場所や役割を感じるコミュニティがない | □ | 社会的所属感の欠如 |
| 愛されていると感じる機会が減ってきた | □ | 愛情への渇望 |
| 誰かの役に立っている実感が少ない | □ | 貢献感の低下 |
👉 チェックが多いあなたは、「つながり」がテーマ。支え合う関係の再構築が必要かもしれません。
承認の欲求(第4段階)
| 問い | レ | 意味 |
| 他人の評価を過度に気にしてしまう | □ | 他者からの承認への依存 |
| もっと感謝されたい、認められたいと感じる | □ | 対外的評価の欲求 |
| 成果や実績を残したいという気持ちが強い | □ | 自己価値の証明欲求 |
| 自信を持ちたいが、根拠がなく揺らぎやすい | □ | 自信不足 |
| 自分の意見や存在が軽んじられていると感じる | □ | 存在意義の希薄感 |
👉 チェックが多いあなたは、自尊心の欲求を充足することが、自信、有用性、強さ、能力、適切などの感情や、世の中で役に立ち必要されるなどの感情をもたらします。
自己実現の欲求(第5段階)
| 問い | レ | 意味 |
| まだやり残したことがあると感じている | □ | 人生の未完了感 |
| 挑戦したいことがあるのに行動できていない | □ | 先送り |
| 今の生活に意味や目的を感じられない | □ | 生き甲斐の創造 |
| 自分らしく生きるための時間や環境がない | □ | 責任転嫁 |
| これまでの人生を肯定できていない | □ | Happy Ending !! |
👉 チェックが多いあなたは、「納得できる人生の完成」がテーマになっています。
自己超越の欲求(第6段階)
| 問い | レ | 意味 |
| 誰かの役に立つことで充実感をさほど感じない | □ | 貢献意識 |
| 自分の存在を超えた価値(家族、社会、未来)には関心がない | □ | 超個人的目的 |
| 死後に残るもの(記録、思想、影響など)に興味はない | □ | 継承への意識 |
| 長期的な意味や影響よりも目先の利益を重視する | □ | 目的志向性 |
| 死んだ後に何を遺しても意味はない | □ | 人生の意義追求 |
👉 チェックが多いあなたは、「人生を超えて何を残すか」を考える段階に達しています。
STEP2:欲求段階判定と充足していない欲求の認識
あなたのチェックが最も多かったのは、どの段階でしたか?
段階を判定する際に次の2点を考慮しておきましょう。
1.マズローは,低次の欲求が充足されてはじめて高次の欲求が現れるとしましたが、完全に満たされる必要はないと言っています。次のような人もいます。
・生活が安定していなくても、芸術や創造に打ち込む人
・愛されていなくても、他者を愛し、貢献しようとする人
・老いや病を抱えながら、なお“人生の意味”を追い求める人
2.必ずしもこの順番通り進むわけでもないことを認めています。
・個人の価値観の違い
自由や創造性に強い関心を持つ人は、物質的に不安定でも自己実現を追求します。
・文化的・時代的背景
日本のように安全や所属が“当然”とされている社会では、それらを意識することなく上位の欲求に進む人が多くいます。
・人生の後半における再編成
高齢期になると「生きた意味」や「遺すもの」に意識が向き、未解決の下位欲求よりも、自己超越的な問いが表面化しやすい。
【充足されていない=顕在化していない欲求は何か?】
どの段階にあるかを判定するとともに、全ての段階において充足されていない欲求を認識することが重要です。自分自身のことながら、自分の知らない自分の欲求を充足することはできないからです。
人生に与えられた時間は限られています。
このワークによって、
☞ 顕在化していない欲求が明らかになる
☞ 欲求に優先順位を付けることが可能となる
☞ その結果ライフプランの内容が変わる
以上を頭の片隅に置いた上で下の表から、あなたの現段階を確認してみましょう。
欲求の段階 | 内容 | キーワード |
| 第1段階:生理的欲求 | 健康的な生活習慣を持っているか? | 「今日を生きる」 |
| 第2段階:安全の欲求 | 住まい、生活資金など、老後の生活に不安はないか? | 「明日が心配」 |
| 第3段階:所属と愛の欲求 | 老後に孤独や孤立することにならならないか? | 「誰かと生きる」 |
| 第4段階:承認の欲求 | 他者からの評価(名誉・尊敬)を得て自己承認(尊厳・自己決定)をすることができるか? | 「自信を持ちたい」 |
| 第5段階:自己実現の欲求 | 自分がなり得るものが明確で、それに向かって進んでいるか? | 「自分を生きる」 |
| 第6段階:自己超越の欲求 | 死後に何を残すか。他者や社会とのつながりを維持しているか? | 「誰かのために」 |
低次の欲求と高次の欲求の関係
低次の欲求を充足しないと高次の欲求が生じないのは原則ですが、第2段階まで充足しないと、第3段階以上の欲求は現れにくいことに注意が必要です。
第2段階の欲求まですべてを充足している人は決して多いとは言えず、マズローの第3段階以降の欲求は、決して身近な欲求とは言えず、生じにくいかもしれません。 そのため、その段階の欲求へのプランニングはあとまわしにされがちで、後から「もっと早く考えておけばよかった」と後悔が生まれるのです。
サラリーマンの現役時代は生活費、子どもの教育費、住宅ローンの返済のためと、生きるために働いていると言えます。家庭の主婦も子どもが巣離れするまでは自分のための時間をさほど持つことはできません。
目先の生活をしのぐための欲求は低次の欲求であると言えます。
低次の欲求はチンパンジー以下の動物にもあります。
人間として生まれたからには、まだ顕在化していない高次の欲求を認識することができるか否かが「人」生の意味を左右することになります。
マズローの6段階説の“再解釈”が求められる時代に
マズローの欲求段階説が発表されたのは、1943年のアメリカ。
それから80年。私たちの生きる社会は、当時とはあまりにも多くのことが変わりました。特に世界で超高齢社会の先頭を走る日本人に1943年当時のアメリカの5段階説はマッチしていません。
かつては「会社」「家族」「地域」「宗教」といった共同体が、人間の欲求を自然に支えてくれていました。 しかし今、私たちは日本人は自分の人生を、自分で考えなければならない時代に生きています。
そこで、マズローの欲求5(6)段階説を超高齢社会の日本人向けに解釈してみましょう。
| 欲求段階 | 1943年(米国中心)※理論当時の前提 | 現代日本(2020年代以降)※社会環境の変化 | 解釈の変化・注意点 |
| 第1段階:生理的欲求 | 若年層中心、労働と生活の安定が前提。住環境やインフラが未整備の地域も存在。 | 超高齢化。医療・介護依存度が高く、「生理的欲求」は日常のケアや生活自立の課題へ。 | 「健康・排泄・食事・入浴」などの基本動作が、他者の支援なしには満たされないことが前提に。 |
| 第2段階:安全の欲求 | 戦後の成長期で「仕事・住居・治安」の確保が中心課題。 | 老後の生活資金の不安、単身高齢者・空き家問題、災害多発社会。 | 安全の定義が「生活基盤の安心」から「老後に向けた予測と備え」に拡張。 |
| 第3段階:所属と愛の欲求 | 家族・地域・教会などコミュニティが機能。帰属感は比較的確保されていた。 | 未婚・離婚・子なし・単身世帯の増加。「お一人様」が多数派に。 | 「所属欲求」が満たされにくい社会構造。誰に見送られるか/看取られるかが不透明。 |
| 第4段階:承認の欲求 | 社会的成功=他者からの賞賛・尊敬。職業的地位や肩書きの承認が主軸。 | 他者承認の機会(退職後)は激減。“自己決定”と“自律”が求められる時代に。 | 「他者から認められたい」よりも「迷惑をかけずに終えたい」「自分で決めたい」へ。 |
| 第5段階:自己実現の欲求 | キャリアや創造性、個性の発揮。社会参加を通じて“自己を発揮”。 | 仕事を離れた後、「役割喪失」に直面。“余生”ではなく“第二の人生”を模索。 | 自己実現が「社会的成功」から「自分らしく生きること」への転換。 |
| 第6段階:自己超越の欲求(晩年に追加) | 神・宗教・利他性への奉仕。自己を超えた目的への没入。 | 無宗教社会。死や老いを語る場が不足。終活・自分史・エンディングノートが代替機能に。 | 「死後の意味」「遺すもの」を可視化する文化が求められる。 |
いかがでしょうか?
寿命の伸長に伴って、6段階のどこにいるかという判定も変わっていることがわかります。
【超高齢社会に生きる日本人によるマズローの欲求5(6)段階説の再解釈】
1️⃣ 社会構造:共同体(家族・地域)が希薄化 → 「支え合いの設計」が個人任せに
2️⃣ ライフプラン:定年後の「第二人生」が長期化 → 自己実現・自己超越が現実課題に
3️⃣ 承認の軸:他者承認から「自分の納得」へシフト
4️⃣ 終末期:寿命の伸長とともに他者と「死」を語る場が不足 → 可視化と共有の道具が必要
マズローが想定したような、以下のような環境は現代の日本のシニアにはほとんど存在しません。
・自然に守られ、
・自然に所属し、
・自然に認められ、
・自然に人生の意味を発見できる世界
欲求は与えられるものではなく、自ら掘り起こすものへと変わったのです。
とくに、第4段階以降(承認・自己実現・自己超越)の欲求は、
周囲からの刺激では満たされません。
本人が自ら「問う」ことでしか、その存在すら気づけないものです。
本人が自ら問うための仕組みが必要だと思いませんか?
2回目の人生としての老後の欲求
老後を2回目の人生であるととらえると人生は2度楽しむことができます。
しかし、加齢に伴って、若い頃に一度クリアしたと思った段階に逆戻りすることがあり得えます。欲求の段階にはラチェットがあって常に高次に向かうわけではなく、低次の段階に逆戻りすることもあるのです。そして、2回目の人生は生理的欲求の真逆の死によって幕を閉じることになります。
従って、心身が衰えていく老後は、あらためて低位の欲求の充足から考えて備えておく必要があります。その意味で、老後は欲求の5(6)段階のリスタートになるのです。
自分に介護が必要となって老人ホームに転居する様子を想像してみてください。
超高齢社会は日本人に老後を良くも悪くも余生としてではなく、2回目の人生として歩ませてくれるのです。
老後を2回目の人生だと考えたとしても、それまでの1回目の人生の延長線上にあることに違いはありません。そこで、1回目の人生において、2回戦目を想定して、老後の欲求5(6)段階を想定して備えておくことが肝要だと言えます。
第2の人生である老後に自分を低次のレベルから歩ませなければならないように備えるのが、老後のライフプランニングであり、リスクマネジメントだと言えます。

【高次の段階から低次の段階に逆戻りする例】
🔹 老後の生活資金が年金だけでは賄うことができず、日々の食費にも汲々とするようになってしまった (第2段階 → 第1段階)
🔹 病気を患って、ベッドに寝たきりの生活をすることになってしまった(第2段階 → 第1段階)
🔹 離婚によって、老後をひとりで暮らさなければならなくなった。(第3段階 → 第2段階)
🔹 仕事でコンプライアンス違反をして退職した結果、社会との絆を失ってしまった。(第4段階 → 第3段階)
自らが欲求5(6)段階を問う仕組み
こうした問いは、誰かがあなたに代わって答えることはできません。
けれど、いざそれを自分に問おうとしても、
“どこから、何を、どう考えてよいかわからない
それが、現代人の共通した課題です。
だからこそ、いま私たちは…
マズローの理論を「時代に合わせて、再解釈すること」が必要です。
そして、再解釈されたその欲求への問いの地図を、私たち自身が持たなければなりません。
もはや、誰かが代わりにやってくれる時代ではないからこそ、 「自分の生き方の選択肢」や「人生の完成のかたち」は、 自ら可視化し、言葉にして、共有しておく必要があるのです。
そうすれば、長い老後を第2の人生として自分の目指すより高次の段階に向けて前向きに生きることができると思いませんか?
Happy Endingカードは、 この答えのない問いに対して、 「考えはじめるきっかけ」を与えてくれるツールです。あなたが気づいていないあなたの欲求を上記のチェックリスト以上に具体的に体験することができます。
Happy Endingカードは、あなたとあなたの気づいていない欲求を洗い出すパートナーです。
マズローの欲求6段階チェックリスト(PDF)をダウンロードして活用してください。

「人間性の心理学」
アブラハム.H.マズロー
産能大出版部


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