ライフデザイン

ノーベル賞の誕生を”予期的後悔”と””オマケから読み解く

爆発物の製造事業で巨万の富を築いたアルフレッド・ノーベル……

「武器商人」、「死の商人」と言われたノーベルでしたが、彼の人生において、最大の収穫は爆発物ではなく、ノーベル賞でした。

ノーベルがノーベル賞を創設した理由は様々述べられています。
ノーベル死亡の誤報記事、科学や文学への関心、平和活動家ベルタ・フォン・ズットナーとの交流などがあります。動機を一つに決めることはできません。

本稿では、その選択を「予期的後悔」「人生のオマケ」という観点から解釈してみます。ノーベルが実際にそう考えたと断定するものではありません。「予期的後悔」と「人生のオマケ」いう視点から読み解くと、私たちの定年後の人生にも役立つヒントが見えてきます。

ノーベルのおかれた環境

1️⃣ 武器商人・死の商人と言われた ノーベル
彼の爆発物の事業は砲弾、弾薬など爆発物を大量に生産、販売していました。
「死の商人」、「武器商人」と言われたことはいわれのないことではありません。

👉 しかし、彼は「死の商人」、「武器商人」などと言われたところで、ダイナマイト、雷管などを発明し、世界的なコングロマリッドを育てた自分に対する自信とプライドは微塵も揺るがなかったと思われます。

2️⃣ 相続させるべき妻と子のいないノーベル
結婚をせず、子どもがいなかったノーベルは、相続させる妻子がない巨額の相続財産を抱えていました。

👉 しかし、死後のことであれば、その財産がどうなろうと、どうでもよいという割り切りも可能です。

3️⃣ 多忙なノーベル
彼はグローバルなコングロマリッドの経営者として、また、様々な爆発物の特許を巡って数多くの訴訟を抱え、発明家としてとても多忙な日々を送っていました。

👉 自分の死後のことをゆっくり考えるような余裕がなかったことが想像できます。

4️⃣ 狭心症のノーベル
ノーベルは、健康に恵まれ続けた人ではありません。生涯にわたり体調の不良を訴え、晩年には狭心症も患っていました。

👉 健康に対する不安は、残された命の活用を強く意識させた可能性があります。

ノーベルの予期的後悔

彼の巨額の相続財産という人生のテーマについて、彼には2つの選択肢がありました。

1️⃣ 巨額の相続財産を使途を決めずに死ぬ(オマケなし)

2️⃣ 相続財産の使途を決めてから死ぬ(オマケあり)

ここで、彼がしたであろう予期的後悔を想像してみましょう。

【予期的後悔とは】
今の自分が行おうとしている選択に対する結果を予想した上で、その結果をみた将来の自分が今の自分の選択を後悔するかどうか、後悔を先取りすること。
将来の自分の後悔を今の選択に加えることによって、将来を俯瞰した選択をする効果があります。

「もし、今、相続財産の使途を決めず(オマケなし)に臨終の時を迎えたら、その時の自分は後悔するだろうか?」

しかし、この”IF〜THEN……“ だけでは、十分な予期的後悔をすることはできません。
なぜならば、これだけでは、将来の自分が具体的にどのような状況に置かれ、その結果、どのような後悔することになるかを具体的にイメージすることができないからです。

従って、予期的後悔は単独ではなく、フレーミング、基準点、反実仮想を含んだ合理的な意思決定プロセスのひとつのステップとして使う必要があります。

この合理的な意思決定プロセスはノーベルに限らず、あらゆる人の人生の重要な選択をする際に役に立つはずです。

ちゃんと考えるための合理的な意思決定プロセス

「合理的」という言葉は様々に解釈されますが、ここでは次の定義に基づいて話を進めたいと思います。

「目的を達成するために最小の努力で最大の効用を生む選択を行うこと」

目的(テーマ)があることが前提です。
目的がなければ行動もありませんから……

生きものとしての人間には時間に限りがあり(生後せいぜい100年)、使うことができる資源(健康、思考、お金等々)にも制限があるとすれば、ひとつのテーマを解決するためにあまり多くの時間と資源を投入してしまえば、他のテーマの解決ができなくなります。

従って、人間は無意識に最小の努力で最大の効用を生むように行動するものですが、その選択(テーマと対処方法)を誤る結果が後悔です。

【あなたの”ちゃんと考える”プロセスとは?】

以下の質問に答えてみてください。
あなたの意思決定のくせがわかります。

Q1.人生の大事なことは、ちゃんと考えて決めた方がよいと思いますか?

Q2.定年後(老後)は、あなたの人生にとって、大事なことですか?

Q3.あなたの「ちゃんと考えるプロセス」を言葉にして、説明してください。

Q4.定年後(老後)のことをちゃんと考えていますか?

以上4つの問いに対して、ちゃんと答えることができない場合は、これから説明するちゃんと考えるための8ステップを参考にしてください。

 

LIFEデザインワークの中核概念である合理的な意思決定プロセス(ちゃんと考えるための8ステップ)に沿った意思決定のプロセスを紹介します。

ノーベルの合理的な意思決定プロセス 

ノーベルの選択を合理的な意思決定プロセスに沿って紐解いてみましょう。

フレーミング、基準点、反実仮想(思考)と予期的後悔というような現代の心理学、意思決定論でクローズアップされている理論を組み込んだプロセスです。

検討すべき課題をフレームとして設定して、8つのプロセスを丁寧に踏んで行くことで、自分の価値観と能力に沿った適切な選択をすることができます。
面倒ですが、人生における重要な意思決定の際に役にたちます。

8つのプロセスプロセスの内容ノーベルの選択
1.フレームを決める意識を集中して人生を左右する重要な問題に焦点をあてる巨額の相続財産をどうするか?
2.基準点(あるべき姿)と現状とのギャップの確認将来の基準点(あるべき姿)を思い描いた上で、現状を振り返り、そのギャップを冷静に感じる。・基準点:相続財産を活用(オマケを付けて)して、社会に貢献した素晴らしい人物として記憶されること
・現状;武器商人、死の商人
3.将来を反実仮想する現状が推移したままの将来を予想する。(不作為の結果)相続財産の使途を決めずに迎える臨終の時の自分の様子
4.因果関係を考えるギャップがあった場合に、それを解消しない原因は何か?
解決策を見つけるために原因の究明が必要。
武器商人・死の商人として人生を終えることを、変えるべき問題として捉えていなかった。だから、財産を使って人生の結末を変える必要性を感じていなかった。
5.解決策を考える因果関係から見えてきた原因を解決する解決策を考える・武器商人、死の商人のままで死ぬのは好ましくないと考えた。
・巨額の遺産を使って、(オマケを付けたら)社会が喜ぶことをしたらどうだろうか?
・ノーベル賞の創設
平和賞を含めて5つの分野で世界的に貢献した人物を表彰して賞金を与えよう
☞ 財産の大部分をノーベル財団に遺贈した基金で賞金と運営費用を賄おう
☞ 遺言を書けばいい
6.予期的後悔をする考えた解決策を実行しなければ、将来の自分は後悔するか否かを想像する臨終の際に、解決策として考えたノーベル賞を実現するための遺言を書いていなかったら、将来の自分は後悔するだろう
7.コスト試算をする解決策の実現可能性をコストと手間の観点から検証する。
実現可能性がなければ、他の解決策を検討する。
1.費用
生前ではなく、死後に財産を遺贈することによって、生前には費用がかからない。
2.手間
<1>遺言作成の手間
<2>もっとも手間のかかる賞の実現は、遺言執行人を遺言に指定することによって、遺言執行人に任せることができる。
8.選択をする以上の1~7までのプロセスを踏んだ上で、最終的に解決策を実行するか否かを決める。遺言を書いて、自分の死後に財産を賞を支える基金に遺贈して、遺言執行人にノーベル賞を実現してもらう。

ノーベルの選択を8つの合理的意思決定プロセスに沿って解釈してみましたが、いかがでしょうか?

直観でなんとなく決めるのに対して、とても面倒ですよね?
でも、人生の大事なことをなんとなく決めて、後で後悔することはないでしょうか?

反実仮想と後悔、予期的後悔の関係

直観で判断するのは無意識かつ瞬間であるのに対して、意識を使った合理的な意思決定プロセスを進めるのは面倒であり、脳に大きな負荷が掛かります。その面倒で負荷の大きいプロセスを後押しをするのが、後悔と予期的後悔なのです。

後悔は感情です。
感情が怠け者の意識にちゃんと検討するように仕向けます。
そのためには過去のことについても将来のことについてもちゃんと反実仮想する必要があるのです。

反実仮想の程度が感情を動かし、動いた感情が意識を動かすのです。

後悔をちゃんとしないと怠け者の脳は直観に逃避してしまいます。

今目の前にない遠い将来を想像することができるのは人間だけです。今目の前にないことを想起する反実仮想の力を活かしましょう。

 

【常に反実仮想をする子どもと反実仮想を忘れた大人】

子どもの頃のおままごと……
お人形を座らせていますが、女の子はそれを人間の家族に見立てて食事をする反実仮想をしています。

男の子が持っているのはただの棒きれですが、それを鉄砲や刀のつもりで戦争ごっこやチャンバラごっこを反実仮想して遊んでいました。

大人になるとなんでも知っているような気がして反実仮想をすることをいつの間にか忘れていないでしょうか?

 

ノーベルの選択を“自分ごと”にする

あなたが定年後に収穫したいもの(オマケ)は何ですか?

定年まで元気で働き、子育てができれば、満足してよいかもしれません。
だが、まだ生きている!
であれば、人生にオマケをつけてもよいよね?

これが人生のオマケです。

ノーベルは、人類への貢献を支える賞という構想を創りました。あなたは、定年後にどんな収穫(オマケ)を得たいでしょうか。

たとえば、「元気なうちに、夫婦でゆっくり旅行したい」。

それが自分の望む未来なら、今の状況を確認します。相手の希望は聞いたか。時期や予算は決めたか。まだ実現していない理由は何か。

そのうえで、先延ばしを続けて旅行できなくなった未来を想像します。「あのとき行っておけばよかった」と思いそうなら、実現方法と必要な費用・時間を検討し、最初の行動を決めます。

このように、予期的後悔を入口に、願望を実行できる計画へ変えるのが8ステップです。

旅行だけでなく、仕事や活動、人との関係、住まい、健康、支援への備えにも、この考え方を使えます。限られた時間やお金を、何に、どの順番で使うかまで整理していくと、ライフプランになります。

ただし、手順を知っていても、考えるべきテーマを見落としていれば、準備はできません。

LIFEデザインワークでは、カードの問いを手がかりに定年後の人生を俯瞰し、8ステップで自分の選択を考えます。得たい収穫と、そのために必要な備えを整理し、自分らしく、生き甲斐をもって生きるライフプランをつくっていきます。

 

LIFEデザインワーク

人生は物語です。

あなたの人生の主役は、もちろんあなた。
そして、あなたの人生の作者も、あなたです。

ライフデザインワークは、
定年後(老後)の人生を、
自分らしく、生き甲斐をもって生きる物語として描くためのフレームです。