自分は呆けるはずはないと思っていたところ……
まさか!夫が……
まさか!お母さんが……
このような家庭が少なくありません。
老後には3つの関所が待ち構えています。
人間はまだ経験していないことであっても反実仮想(想像)することができる唯一の生きものなのですが、あなたはその3つの関所が何であるか言えるでしょうか?
もし、言えなければこの動画を観た方がよいかもしれません。
3つの関所を通らなくてもすむはずはありませんよね?
それはあなただけではなく、あなたがサポートする家族も含めた上でのことです。
しかし、それらの関所をやすやすと通過する通行手形があるのです!
関所を通るための基本的な知識のチェック
2020年には、65歳以上の5人に一人が、2040年には実に4人に1人が認知症になると推定されていています!
認知症の有病率の推計
(厚生労働省 認知症施策の総合的な推進について)
2012年 462万人(15.0%)
2020年 631万人(18.0%)
2025年 730万人(20.6%)
2040年 935万人(25.4%)
さらに、生きたまま意思能力を失う原因は認知症だけではありません。
脳梗塞、事故など様々です。
人ごとではありませんよね〜
あなたは任意後見と法定後見の違いを理解して契約していますか?
(Happy Ending カードNo.D-02)
この違いが大きなリスクなのです。
YESでしょうか?NOでしょうか?
リスクはどこに?
ケースをふたつほど取り上げましょう。
認知症などで、意思能力を失って生きるとどのようなことが問題になるのでしょうか?
自分自身が意思能力を失った場合と家族が失う場合の両面で考えて見てください。
(ケース1)認知症の家族の銀行預金の払い出し
認知症の母親を老人ホームに入居させるために、入居一時金の振り込みに銀行に来た長女。そのお金は、母親名義の預金から振り込もうとしています。
母親の通帳と銀行印で介護施設に振込をしようとしたところ、銀行員からこのように言われてしまいます。
「取引はお母様ご本人しかできません!
ご本人が認知症でお取引ができないのであれば、法定後見人を立てていただく必要があります。」と……
えっ、法定後見人?
まさか!……
初めて聞く「法定後見人」という法律用語に長女は戸惑うばかりでした。そして、介護施設への振込ができずに困ってしまいました。
このようなケースは、どこの家庭でも起こりそうなことではないでしょうか。
本人が意思能力を失ってしまうと、当然のことながら、財産管理を本人自身が行うことができなくなることを知っていても、それを家族が代わりにすればよいだろうと考えている人が少なくありません。
しかし、それはできないのです……
そこで、仕方なく、今まで一度も行ったことがない家庭裁判所に、法定後見人の選任を申し立てをせざるを得なくなります。
娘自身が自分を後見人候補として申立をすることはできますが、必ず選ばれるとは限りません。
これは、サポートする家族がいたとしても、サポートをすることができなくなるリスクがあることを意味しています。
本人が意思能力を失うと、その財産管理を本人が行うことができなくなりますが、それを家族でも行うこともできないことはあまり知られていません。
そこで、誰もが行ったことがない家庭裁判所に法定後見人の選任を申し立てる必要が出てきます。
娘自身が自分を後見人候補として申立をすることはできますが、必ず選ばれるとは限りません。これは、サポートする家族がいたとしても、サポートできないリスクがあることを意味しています。
母が健常である間に、予め娘を任意後見人とする任意後見契約を結んでおけば、娘が引き続き母の財産管理と身上監護を続けることができます。
(ケース2)認知症の相続人がいる場合の、遺産分割協議書の取扱い
ケース2は、相続が発生した際に意思能力のない相続人がいるケースです。
遺言を遺さずに死亡した父の財産(預貯金と不動産)の相続手続をする必要があります。
相続人は妻と娘2人です。
しかし、すでに妻は重度の認知症で判断能力がない状態で老人ホームに入居しています。
母は財産を相続しても、重度の認知症であるために、その管理と処分をすることができません。
そこで、娘ふたりは相談して、はじめから娘ふたりが1/2ずつ相続して、その財産から母親の介護の費用をそれぞれ負担しようと考えたのです。
法定相続割合 母が1/2、長女1/4、次女1/4
↓
遺産分割協議 長女1/2、次女1/2
法定相続割合と異なる相続を行う場合には、相続人の遺産分割協議書を作成する必要があります。
特に、銀行預金等金融資産の払い出しと不動産の登記には、遺産分割協議書が必要です。ふたりの娘は、認知症の母のからの合意は不要で、自分たちふたりの合意だけで大丈夫だろうと考えていました。
そこで、父の預金口座のある銀行の支店に行って遺産分割協議書の書き方を相談したところ、下記の答えを聞いてびっくりしてしまいました。
「生きていらっしゃる以上は、遺産分割協議書に奥様の同意も必要です。」
でも、同意することができないのだけど……
「奥様が認知症で判断能力がない場合には、法定後見人を立てて、奥様の相続を後見させなければなりません。」
えっ、法定後見人?
しかも、
「奥様の後見人の役割は奥様の財産の保全ですから、後見人が奥様の財産をお嬢様方お二人に分けることを承諾する可能性は低く、結果として、奥様は法定相続分の1/2を相続し、その相続財産の管理は法定後見人が行うことになるでしょう。
そして、奥様が亡くなって初めてお嬢様おふたりに相続財産として引き渡されることになるでしょう。」と……
まさか!
相続発生時に、意思能力のない相続人がいることのリスクです。
どこの家庭でも起こりそうなことではないでしょうか。
相続発生時に、意思能力のない相続人がいる場合、相続財産の多寡にかかわらず、家族だけで遺産の分割協議ができず、法定後見人という外部の人間が家の財産の管理・処分に介入してくる可能性があります。
☞ 母が意思能力を喪失する前に娘を後見人とする任意後見契約を結んでおけば、認知症の母が1/2の財産を相続したとしても、その財産管理と身上監護を娘がすることで問題は回避できました
意思能力喪失のリスク
意思能力を失うリスクは、大きく2点あります。
第一は、今まで当たり前に自分自身で決定していたことを、全て誰か他人に判断を任せざるを得なくなるリスクであり、第二は、その判断を自分の望む人に任せることができなくなるリスクです。
<1>任せざるを得なくなる財産管理と身上監護の主な内容
(1)本人の生活に必要な商品の購入代金、利用料の支払いを中心とした財産管理。
(2)本人のために必要な売買契約、病院への入院契約、介護施設との利用契約などの身上監護。
(3)本人が受ける医療行為についての代理承諾。
(4)本人の葬儀や埋葬など死後の整理。
(5)相続の内容とその手続。
<2>任せる人
本人が任せたい人に任せられないリスク。
任意後見と法定後見の違い
成年後見には法定後見と任意後見のふたつの制度があります。
上のケースは2つとも法定後見人が必要となってしまい、困ってしまったケースです。
下の対比表を見て、自分と家族にとって、どちらが好ましいか考えてみてください。
法定後見人の選任は家庭裁判所に申立を行います。
家庭裁判所が後見すべき内容から後見人まで、全て決定します。
後見人は必ずしも本人の家族が選ばれるとは限りません。社会福祉士、司法書士、行政書士、弁護士などの専門家が選ばれる可能性があります。
この2つのケースのように、家庭内の問題の解決が家庭内で行うことができず、裁判所等第三者の力を借りなければ解決できなくなってしまうことは、大きなリスクであると思いませんか。
それに対して、今は正常な判断能力を有しているものの、将来その能力を喪失することに予め備えるのが、任意後見制度です。
任意後見は、本人が何を、誰に任せるかを予め決めておくことが可能な制度です。
(※ただし、任意後見においても、任意後見人を監督する後見監督人を家庭裁判所に選任してもらう必要があるので、第三者と全く関係なくことがすすめられるわけではありません。)
任意後見と法定後見の最も大きな違いは、予めリスクを回避するために自助として備えるか、事後的な救済を公助(国)に求めるかという選択にあります。
任意後見と法定後見の最も大きな違い
予めリスクを回避するために自助として備えるか、事後的な救済を公助(国)に求めるかという選択にあります。
しかし、事後的な救済が事前の備えを上回ることはありません。
特に本人をサポートする家族がいる場合に、財産管理を第三者に委ねなければならないのは大きなリスクです。
5.任意後見でカバーできない意思能力喪失リスク、公正証書5点セット
意思能力喪失リスクに備える基本形は公正証書5点セットです。
five-gear!!
ゼンマイで動く時計を想像してみてください。
個々の契約(歯車)が単独であるいはバラバラに回っても針は動きません。
時計と同じように、5つの歯車がきちんと噛み合って初めて、意思能力喪失のリスクに対応することができます。
<1>財産管理委任契約(任意代理契約)
本人に意思能力があっても、病気で療養中などで寝たきりであったり、外出が困難な場合には、判断は本人が行い、実務行為を委託する契約です。包括的な委任状とも言えます。
金融機関との取引には、別途それぞれの届け出が必要となります。
<2>任意後見契約
本人が意思能力を喪失した後に、後見予定者等が家庭裁判所に任意後見監督人(任意後見人を監督する人)の選任を申立て、任意後見監督人の選任後に効力を発し、契約に基づいて、本人に代わって財産管理と身上監護を行います。後見の効力は本人が死亡する時に終了します。
<3>医療の事前指示書
本人が医療行為の選択を行えなくなった際に備えて①代理承諾者を決めておきます、そして、植物人間状態となった際に人工的な延命措置を希望するか否かを②尊厳死宣言として予め決めておくことができます。
人工呼吸器を設置されたり、鎮静剤を投与された段階で本人が意思表示することができない場合への備えです。
<4>死後事務委任契約
病院、介護施設等からの遺体の引き取り、葬儀、火葬、埋葬、債務の整理、年金の支給停止などの諸届などは死亡した本人が行うことはできません。従って、予めそれを行ってくれる人の目処がなければ放置されることになります。
してくれる家族等がいない場合には死後事務委任契約をしておくことができます。
誰もしてくれる人がいない場合は市長村長が税金で行うことになります。
後見契約の効力は死亡時までですから、後見人に死後事務はできません。必要な人は別途契約しておきます。
<5>遺言
遺産の処分について法定相続人以外に、あるいは法定相続割合以外の内容で遺したい場合には遺言が必要です。
<6>信託の活用
信託の機能を使いたい場合は、財産管理委任契約、死後事務委任契約、遺言を信託契約にとりまとめることができます。
しかし、財産権の移転に抵抗感があること、信託契約の組成、登記、設定等にコストがかかることから、その選択には慎重な判断が必要です。
信託は何でもできるというような提案にはその必要性を慎重に判断しましょう。
そして、信託にできることは財産管理だけですから、身上監護については別途任意後見契約と医療に関する選択が必要です。忘れずにセットしましょう。
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☞「リスクポリシーとしてのfive-star 公正証書5点セット」
・65歳以上の5人にひとりは認知症とされており(2020年)、超高齢社会に生きる人間として、意思能力を失って生きるリスクに備えるか否かを今判断した方が賢明である。
・財産の多寡にかかわらず、判断能力を失うと財産管理、身上監護等で法定後見人(他人の可能性が大きい)のお世話になりかねない。
・成年後見には、備えをしていない人への救済策としての法定後見と、予め意思能力の喪失に備える任意後見の2つの後見制度があり、任意後見を契約しなければ、必要になった際には自動的に法定後見になる。
・意思能力喪失の総合的な備えとして公正証書5点セットは有力な備えとなる。
この記事を読んでいただいた人のHappy Ending を!