行動心理学

ファクターX ー 未知のリスクの領域

「賢明な人でも知らないことに備えることはできない!」

人は「賢いからリスクに備えることができる」のではなく、賢かったとしても、知っている領域にしか備えられないのです。

知らない未来は、想像できない。
想像できない未来には、基準点も置けない。

その“見えていない領域”が、ファクターXです。

1.ケース:子どものいない夫婦の相続

子どものいない夫婦の場合、
一方の配偶者の財産はすべて残された配偶者が相続すると思って疑わない人が少なくありません。

しかし民法はまったく別の答えを示します。

民法第900条第3項によると、相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合の法定相続割合は

配偶者  3/4

兄弟姉妹 1/4

なのです。

ただし、被相続人が全てを配偶者に相続させると遺言を作成しておけば、その通りになるのですが……

(法定相続分)

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

(遺言による相続分の指定)

第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

民法におけるこの条文を知らず、
「遺言なんて、まだ早いでしょ」と先送りしていた夫婦がいました。

夫が急逝し、残された妻が住んでいた家は夫名義、預貯金の大半も夫名義でした……
妻は当然、「すべて私が相続する」と考えていました。

しかし、法務局で告げられた現実はまったく違いました。
「4分の1はご主人の兄弟姉妹の相続分です」

と言われ、妻は愕然としました。
家は共有状態にしておくわけにもいかず、売却するか、あるいは義理の兄弟姉妹の“持分を買い取る”しかありません。

「遺言を作っておけば、こんなことにはならなかった…」
妻のこの言葉は、“知らなかった”ことによるリスクの典型です。

未来の後悔は、運命ではありません。
ファクターX(未知のリスクの領域とリスクの振れ幅)を知ることによって、初めて将来の後悔が見えてくるのです。

人は「知らない領域」を想像できない。
想像できない未来には基準点(望ましい未来像)を置けず、未来の変化も読み取れない。

これが“無知”が後悔を招く極めてシンプルなメカニズムなのです。

知ったかぶり……
「知っているつもり!?」の無知が最も危ないと言えます。

無知の後悔を将来味わいたいですか?

👉 無知ほど怖いものはないのです。

2. リスクとは“未来の変化の領域とその幅”である

本稿で扱う「リスク」は、一般的にとらえられている“危ないこと”とは異なります。

ここでいうリスクとは、良くも悪くも現状からの「変化」です。
リスクとは、
1️⃣ どの領域で変化が起こりうるか
2️⃣ その変化がどの程度の幅を持つか

の両方で構成されます。

ちゃんとした判断に必要なリスクの情報は以下の4点です。

1️⃣ 自分に影響を与えるリスクの領域
2️⃣ 最善の変化・状態
3️⃣ 最悪の変化・状態
4️⃣ 基準点(あるべき姿)

3.ファクターXとは?

ファクターXとは、この未来の変化が起こりうる“領域と”幅””です。

ファクターXというと、「未知のリスク」と考えがちですが、
正確には、未来に変化が起こりうるリスクの領域そのものを指します。

その中には、すでに意識している領域もあれば、まだ気づいていない領域もあります。重要なのは、領域を知っているかどうかだけではありません。その領域の中で、どのような最善の未来と最悪の未来がありうるのか。つまり、どのような変化の幅があるのかを知ることです。

✅ 既知の領域 = 領域存在は知っているが、振れ幅までは見えていないことがある
👉 なんとなくは知っているが、良くは知らない状態

✅ 未知の領域 = そもそも存在に気づいていない
👉 何も知らない状態

ファクターX(未知のリスクの領域とその幅)を知らなければ、最善と最悪の幅を認識することもできませんし、その中で自分が目指すべき基準点を設定することもできません。

地震も、相続も、健康も、介護も、判断力の低下も、すべてが未来を形づくる“変化の領域”であり、その存在を知らなければ、残念ながら、賢明な人であってもその領域におけることについては何の想像力も働かないのです。

4.予期的後悔のフロー

システム2(論理的思考)はファクターXをトリガーとして、下の図のプロセスで未来をデザインします。

未来のリスク(変化)を発見するのはシステム2(論理的思考)です。
詳細は参照「予期的後悔リテラシー」

 

5.ファクターXがなければ始まらない

「賢明な人でも知らないリスクに備えることができない」理由は、

ちゃんと判断する合理的意思決定プロセスを知ったとしても、その方程式に代入する”X”の値がわからなければ、答えは出ないからです。

「賢明な人でもファクターXを知らなければ、将来のリスクに備えることはできない」

従って、人間の思考の起点となるファクターXが何ものにも増して重要であるということです。

 

6. 定年後(老後)のファクターxを漏れなくチェックする方法

ファクターxは様々な分野で必要となる変数ですが、自分の心身が弱くなる老後のリスクは早いうちに知っておかないと備えることができません。

老後のファクターxをどこで見つけますか?

多くの人は、老後に潜むファクターXを知らずに老後に突入してしまいます。知らない領域は想像できず、想像できない領域には基準点すら設定することができません。

ライフデザイン カードNO.G-1 法定後見人の確認)
このカードを知っていれば、子のいない夫婦は遺言を書くと思いませんか?

【ライフデザイン カード】

ライフデザインカードは、49枚のカードで老後におけるファクターX を体系化し、未来の変化の領域を「見える化」するゲーム!

☞ 49のファクターXを知れば、未来の変化の幅が見えます

☞ 変化の幅が見えれば、基準点を置くことができます。

☞ 基準点を設置すれば、予期的後悔が起動します。

☞ 予期的後悔が起動すれば、選択が変わります。

 

ライフデザインワークにおける本記事のポジション

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