不幸にも大きな災害に遭遇してしまった際に、TV局のアナウンサーにカメラとマイクを向けられて、
「まさか!こんなことになるとは思ってもみなかった。」
「今までにこのようなことは一度もなかった!」
「想定外だった……」
と語る人たちをどれだけ見て来たことでしょう。
「想定外」を放置するリスクは、備えることができないため、遭遇してしまうとダメージが大きくなってしまうことです。
ニュースにならないレベルの個人の「想定外」は山ほどありますから、「想定外」が発生するメカニズムを理解しておいて損はありません。
新潟県中越沖地震(2007.7.16)と東日本大震災(2011.3.11)
の関係から見る繰り返される想定外
3.11(東日本大震災)において、福島第一原子力発電所を襲った高さ13mの津波は「想定外」だったと言えるでしょうか?
次のコメントは3.11後ではなく、その4年前に発生した新潟県中越沖地震(2007年7月16日)で新潟柏崎刈場原子力発電所が罹災した際のものです。
「東電社長の勝俣が初めて被災地に入ったのは地震発生2 日後の7 月18目だった。新潟県庁を訪れた勝俣は、知事の泉田裕彦と面会した際に、原発を襲った地震をこんなふうに表現した。「いい体験とし、世界一安心、安全な原発として再構築したい。」
東京電力・福島第一、第二原発がある福島県知事の佐藤雄平は7 月18日、南相馬市で聞かれた12市町村の首長との意見交換会で、「想定外の揺れを想定することが、原発の安心・安全を確保するうえで大切だ」「国と東京電力に対して安全性の再考を要請する」と強調した。」」(「震度6強が原発を襲った」朝日新聞社より)
新潟柏崎刈羽原子力発電所は、震度6強の地震によって建物等に損傷を受け、一部放射性の汚染水が海中に漏れ出たものの、原子炉は低温停止し、メルトダウンは免れました。しかし、変圧器に火災が発生するなどし、原発の地震への安全対策が改めてクローズアップされたのです。新潟柏崎刈羽原子力発電所の火災は「想定外」の横揺れが原因であったとされていますが、3.11の予兆だったのです。
3.11の発生
2007年に東京電力社長が「いい体験とし」と言い、福島県知事が「想定外の揺れを想定することが」と述べたかいもなく、その4年後の2011年3月11日に東日本大震災が発生し、またしても「想定外」の大きな津波によって福島第一原発は全電源を喪失した結果、メルトダウンという最悪の事態を引き起こしてしまったのは周知の通りです。
新潟中越沖地震はマグニチュード6.8、震度6強、東日本大震災はマグニチュード9.0、震度6強(福島県)に加えて13mを超える津波など、すべて防災の基準を上回る「想定外」の事態と損害でした。
7.16の後の3.11は「想定外」と言えるのでしょうか?
個人の生活においても「想定外」は同じように起こります。良い「想定外」はさておき、Happy Ending を大きく阻害する「想定外」はあらかじめ排除しておきたいものです。「想定外」が生じるメカニズムの理解は、「想定外」をコントロールする一助となるでしょう。
想定外が生じる理由(その1)ブラックスワン
「想定外」が生じる理由の第一はいわゆるブラックスワンです。
「白いスワンをどれほど多く見ても、それは次に黒いスワンが見られないということを保証しうるものではない。」ハーバート・A・サイモン
1697年以前においてswan(白鳥)の色は白しかないと思われていました。英語のblack swanは、ありえない黒いswanを探すのは無駄な努力であるとの意味があったくらいです。
しかし、1606年にオランダ人によって発見された新大陸オーストラリアにおいて1697年にブラックスワンが見つかり、世界を驚かせます。その後、ありえないことが起こりうることをブラックスワンというようになったといいます。
過去の経験と統計を基準にした想定は、ブラックスワンに対しては2つの理由から無力です。第1に、将来に発生することが、すでに過去にすべて発生しているとは限らないこと。第2に、発生していたとしても、そのデータを我々が入手しているとは限らないからです。また、当然のことながら、過去に起こっていないことを予想することは難しいのです。
そして、科学は仮説の証明です。確からしさがなければ、受け入れられません。従って、ブラックスワンがいるかもしれないと言ったところで、科学者からはデータを示せと言われるだけで、相手にされません。しかしながら、科学者もブラックスワンがいないことを証明することはできないのです。
「想定外」が起こる理由のブラックスワンとは、
経験(fact)がないことは起こらないと解釈してしまう思考習慣
「想定外」が起こる理由 (その2)街灯の下の鍵探し
街灯の下の鍵探しはこのような話です。
「夜の公園の街灯の下で何かを探している男がいました。
通りかかった通行人が、何を落としたのか?と聞くと、家の鍵を落としたというのです。気の毒に思って一緒に探してやろうと思い、さらに男が捜している街灯の下で落としたのかと聞くと。
わからない、でもここは明るくて探し易いと言ったそうです...
通行人はあきれて、その場を立ち去りました。」
その男にとって、暗い夜の公園の中で鍵を探せる場所は、落とした場所とは関わりなく、街灯の下だけだったのです。暗い場所にあるかもしれないことはわかっているのですが、懐中電灯でも持っていなければやむをえません。
原発の安全対策も街灯の下だけだったのではないでしょうか。
原発の安全対策における街灯が照らす範囲は経済合理性なのです。危険な原発を使う大きな理由は他の発電よりもコストが安い点にあるのですから、営利企業である電力会社もそれを応援する国もその範囲で対策を取ろうとします。その経済合理性を失うのであれば、他の発電に切り替えざるを得なくなるからです。
従って、原発の安全対策は100%に近い安全を求めているのではなく、電力会社にとって、経済合理性の範囲内で限定的にしか行われていなかったと言えるでしょう。
もし、そうでなければ、中越沖地震の社長と知事の発言に従ってなんらかの対策が打たれていたはずです。
このように、大きな地震が「想定外」となるもうひとつの理由は、電力会社と国の街灯が照らす経済合理性の範囲によって、対策に巨額のコストがかかるであろう大きな津波の発生は暗闇の中にあるとされ、検討の対象外となっていたのです。
「想定外」の原因としての街灯の下の鍵探しは、
ある人にとって、考えたくないことは考えない結果としての「想定外」。
もうひとつ別の言い方をすれば、見たくないものから目を背けた結果の意図的な「想定外」
人生における「想定外」の発生とその理由
さて、肝心な私たちの人生の「想定外」はどうなのでしょう?
台風・地震などの自然災害、交通事故、がんを含めた生活習慣病・認知症の発病などは、個人の人生を大きく左右する「原発事故」であると言えるでしょう。
それらに対して漠とした不安を抱えているものの、このようなリスクとその要因をすべて洗い出した上で、予防する対策を実行しているかと問われると、大半の人は何もしていないか、経験した範囲でやっているというレベルだと思います。(東電の社長と福島県知事のように)従って、個人の「原発事故」もやはり「想定外」になってしまう場合が多いため、冒頭に書いた通り、TVニュースのインタビューを繰り返し見聞きすることになります。
その大きな原因はやはり、ブラックスワンと街灯下の鍵探しです。
ブラックスワンの視点では、現在健康な人は次の健康診断で胃がんが発見されるとは考えていません。物忘れが激しくなったと思っても自分がアルツハイマー型認知症であるとは思いません。さらには、今日交通事故で亡くなった人は、昨日までは今日死ぬとは思っていなかったはずです。今までブラックスワンを見たことがないから明日も見ないだろうと考えがちです。
さらに、街灯下の鍵探しの視点で考えてみると、ほとんどの人は今の生活において認識している問題、すなわち仕事、お金、家庭、子ども、遊びなどで頭の中は一杯です。今認識している問題が、街灯の灯りが当たって鍵を探し易い場所であって、暗い場所にあっていまだ認識していない問題まであえて確認しようとする人はわずかです。
このような個人の生活におけるブラックスワンと街灯下の鍵探しは、ごく普通のことだと言えます。しかし、「想定外」をなくすためには、今までの思考習慣を変える必要があります。しかも人生100年時代と言われているように超高齢社会における新種のリスクが待ち構えているのです。
他人事:自分は経験していないが、日本で客観的に発生している事実
・年間3千人以上が交通事故で死亡
・年間約100万人ががんと診断されている
・約700万人がすでに認知症である推定されている
・年間131万人が死亡している
要約すると:「想定外」をコントロールする
「想定外」が生じるメカニズムとして、ブラックスワンと街灯下の鍵探しをご紹介しました。「想定外」の発生の原因は自分自身の習慣化(固定化)した思考です。従って、「想定外」をコントロールしたければ、思考習慣を変える必要があります。
「想定外」を全くなくすことはできませんが、ある程度は限定し、コントロールすることは可能です。下の2つのポイントを参考にしてください。
ブラックスワン対策
他人に起こっていることは自分にも起こると受け入れることができれば、その他人の経験から、自分にも出現する可能性の高いブラックスワンを早く発見をすることができます。他人の経験はニュースなどの報道や書籍にて容易に入手できます。自分が遭遇したわけではないが、自分がそうなったらどうしようかとあらかじめ具体的に想定してみるのです。他人の経験があたかも自分の将来のシミレーションであるかのように。
街灯下の鍵探し対策
習慣化している思考のフレーム(前提条件)を時々変えてみて、暗くて見えないところにあるものも、たまには想像してみる習慣を身に付けることです。
たとえば、期限を今晩ではなく明日にしたら何ができるのかとか、コストはいくらかかってもかまわないとしたらどうなのか、といったように思考のフレームを下記のポイントで変えることによって気づきを活性化することができます。
・使用する資源の量と質
・期限
・成果物の内容
人生の「想定外」をコントロールするために
福島県知事は2007年の中越沖地震を原因とした新潟県(他人)の新潟柏崎刈羽原子力発電所の事故を見て気付いていたのです。「想定外の揺れを想定することが、原発の安心・安全を確保するうえで大切だ」「国と東京電力に対して安全性の再考を要請する」…
東京電力の社長は、自社の新潟柏崎刈羽原子力発電所の損壊を見て気付いていたのです。「いい体験とし、世界一安心、安全な原発として再構築したい。」
二人とも不安には思っていたのです。しかし、ブラックスワンと街灯下の鍵探しの習慣化した思考から抜け出すことができず、4年後に取り返しがつかない事態を発生させてしまいました。
自分の人生を後悔が残るようなことにしたくなければ、今後の人生におけるブラックスワンと照明が届かない暗闇におけるリスクを知り、対策を早めに打っておく必要があります。
人生100年時代のブラックスワンを予知し、今の街灯が照らしていない暗闇を明るくするHappy Ending カード!!
Happy Ending カードのプレイは「想定外」を限定し、コントロールする出発点となります。詳しくは下のリンクから。
☞ Happy Ending School Happy Ending カード体験会