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なぜ、将来の欠乏に気がつかないのか? 欠乏とトレードオフ思考の関係

締切りに追われている時、もっと早く着手すればよかったと、1回くらいは思ったことがあるでしょう。とんでもない!1回どころじゃないよ〜ですか?……

時間が豊かにある時に気づかないのは、締切り近くになると残り時間が少なくなるという、子どもですら知っている非常に簡単な原理です。時間の経過によって、将来時間が欠乏するということを理屈でわかっているにもかかわらず、それを無視する理由は何なのでしょう。

その根本的な原因が「欠乏とトレードオフ思考」にあるということを
「いつでも時間がないあなたに 欠乏の行動経済学」から紹介します。

もっと早く着手すればよかったと後悔したくない人は、続きをどうぞ。

スーツケースのトレードオフ

明日出発する3泊4日の旅行の荷造りをしようとしています。
はじめは大きい方のスーツケースを選んで、着替えは下着4組、シャツ3枚、パンツ2本、ジャケット1枚、トレーニング用シューズ、化粧品、パソコン、カメラまで様々なものを乱暴に詰め込みましたが、ケースが大きいのでスペースにはまだ少し余裕があります。お土産まで入りそうだと一息つきます。

しかし、待てよ!
この大きなスーツケースでは、階段では両手で抱えなければ上り下りすることはできないし、列車、バスなどにおける積み卸しがやっかいかも……と考えると憂鬱になってきました。

そこで、もう一つ小さい方のスーツケースに詰め替えることにしました。これなら、列車の網棚に乗せることもできます。
しかしながら、スペースが狭いため、先ほど放り込んだ荷物が全部は入らない……
先ほどと違って、持っていくモノを吟味せざるを得なくなります。

何かを入れようとすると、何かを諦めなければならなくなりました。衣類は丁寧にたたみ、ブレザーと革靴は諦め、パソコンのかわりにiPadにしました。限られたスペースから、旅先の行程に必要不可欠なモノを厳選して、優先順位の低いものは諦めました。

しかし、よく考えてみると、持って行かなくてもよいものがいくつもあったのです。そして、持ち運びが容易な小さなスーツケースに旅行の準備が過不足なくできただけではなく、それらを使う行程についてもしっかりとイメージすることができたのです。明日からの旅がより楽しみになりました。

大きなスーツケースは、スペースが豊かなので欠乏を感じさせませんが、スペースが欠乏している小さなスーツケースは、荷造りをする際にトレードオフを強く意識させたのです。

トレードオフとは

一方的に何かを取得するのではなく、交換条件で何かを差し出さなければならない取引。

スーツケースの場合は、持って行ける荷物の量と移動の容易さをトレードオフした。

しかしながら、移動の困難を我慢すれば、スペースが豊かな大きなスーツケースの方がいいじゃないかと言う人もいると思いますが、そうではないのです。
現在の豊かさが将来の欠乏を生み出す元凶となることについて考えてみましょう。

豊かさが返って将来の欠乏を引き起こすケース

◇ 時間の欠乏
小学生は、休みが長いので夏休みの宿題はいつでもできると思っていたが、あっという間に明日が二学期の始業式になってしまい、徹夜で何とか宿題をすることになった。

☞ 一学期の終業式の時には夏休みは豊かな時間に溢れていた。

◇カロリーの欠乏
減量のため、1日の食事のカロリーをスマホで計算して管理していた。ランチは誘惑に負けて豚骨ラーメンを食べてしまったので、夜は400cal以内に納めなければならなくなった。

☞ ランチの前にはそれなりに摂取カロリーに余裕があった。

◇金銭の欠乏
サラリーマンが、ボーナス併用払いの住宅ローンを組んで家を購入したが、不況でボーナスがカットされた結果、ボーナス時のローンの支払いに窮することになってしまった。

☞ ボーナスがカットされなければ問題はなかった。

◇社会性の欠乏
理想的な相手が現れたら結婚しようと、気ままな一人暮らしを続けてきたが、年齢が50歳を超えてくると、さすがに自分の老後の面倒を見てくれる人がいないことに不安を感じるようになった。

☞ 若い頃にはおひとりさまでもなんら支障はなかった。

欠乏とは、必要と感じるものより、自分が持っているものが少ないことを不幸と感じること

欠乏(必要と感じる内容)は時の推移によって変移していく。

・欠乏のリスクは、豊かな時にはそれを無視しがちな点にあり、意識的に考えれば容易に想定される欠乏は、時間の経過とともに豊かさが失われ、無意識的にも顕在化する。

欠乏はトレードオフを意識させる

スケジュールはガラガラだったため、ずいぶん先のアポイントを了承してしまったが、その近くになってから、どうしてそんな約束をしてしまったのだろうと後悔した経験はありませんか?
1ヵ月先のアポイントは時間が豊かな時だったので、トレードオフ思考の対象となるイベントがありませんでした。しかし、その期日が迫ってくると、トレードオフすべきより自分にとって重要なイベントが出現してくるのです。

しかも、時間はその時点で欠乏し始めています。時間の欠乏がトレードオフをより鮮明にします。

このように、実は様々な資源が豊かな時にはトレードオフ思考は働きません。時間の経過につれて、トレードオフの対象となるイベントが発生するのが必然なのにもかかわらず。

将来の資源の欠乏を意識すると、現在発生していない事象とのトレードオフを前提とした資源の使い方の選択ができるようになる。

今は豊かに思えるかもしれないが、将来欠乏しがちな資源

・健康
・五感
・愛(恋愛)
・お金
・社会性(人間関係)
・記憶
・意思能力
・時間

もっとも重要な時間の欠乏

「生」物が最も管理すべき欠乏は時間です。
時間がなければどんなに頭が良かろうが、財産があろうが何もできません。時間がすべてなのです。

しかしながら、残念なことに、もっとも管理されていないのがこの時間なのです。

死が生物から完全に時間を奪います。
時間は、大きさが徐々に小さくなるスーツケースのようなものです。

スーツケースのスペースを大切な想い出を詰める場所だと考えてみましょう。まだ大きなスーツケースを持っていて、多くの想い出を詰め込めると考えている人が少なくありませんが、そのスペースはだんだんと狭くなっており、すでに、さほど余裕がないのです。

今していることと、将来することがトレードオフの関係にあることに気付きません。また、若い頃のようにいくらでも想い出を詰めるスペースがあるだろうと勘違いしています。そこで、どうでもよいことでその貴重なスペースを埋めてしまいます。

残されたスペースの狭さに気づいて、それがトレードオフの関係にあることに気づくのは余命がわかったときでしょう。あるいは、残念ながら、認知症となって、それすらわからない状態に陥っている可能性もあるのです。

◇資源の豊かさが仇となる。
リタイア後の金銭的・時間的豊かさが返って仇となり、将来の様々な資源の欠乏を感じさせにくくすることに注意が必要。

◇時間の使い方
最も重要な資源である時間の使い方を,常にトレードオフ思考でチェックしないと、後に時間の欠乏と後悔を招く。(Aをする=Bをしない)

◇人生(想い出)のスーツケース
後半生の人生のスーツケースを小さく考えておくことで、その豊かさの誤謬から逃れることができる。(大きなスーツケース1つではなく、小さなスーツケースを複数追加していくイメージ。)

◇バケットリストの作成
時間の経過とともに縮小していく人生のスーツケースのスペースに何を詰めるかをバケットリストにまとめる。

人は明日の健康診断でがんが発見されるとか、今日交通事故で死ぬとは思っていません。まだ豊かに時間はあると考えています。
自分の余命があと1年だとわかったら、あと1ヵ月だとしたら、やりたいことは、今しているコトではないのではないでしょうか?

今のうちに自分の夢をスーツケースに入れておきましょう。
入らなくなる前に。優先順位は着手の順番です。

人生のスーツケースに詰めたいコトを漏れなくバケットリストに記載する

自分の人生のスーツケースに詰めておきたい想い出をバケットリストに書き出しましょう。
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