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マンガでわかる!老人ホームに入居する際に備えておきたいこと

これから老人ホームへの入居を考えようという人、あるいは親を老人ホームに入居させたいと考えている人に
老人ホームに入居する際に、合わせて備えておいた方がよいこととは何でしょうか?

老人ホームに入居すれば、もちろん、日常の生活における身上監護と介護については大丈夫でしょう。

しかし、それだけで安心してはいけません。
そのことについて続きをご覧ください。

アイデンティティにもとづく自己決定

人が人として生きていくために、もっとも重要なのは……
アイデンティティ(独自性・個性)です。
アイデンティティは、自分のことを自分らしく自分で決める自己決定の源泉です。

自分らしさ、思考・行動の一貫性によって、自己と他を区別して、その存在を認識しています。あらゆる認識は差違から得ることができます。

他人とは異なるアイデンティティがあるからこそ、自分らしい判断を下すことができ、その決定に納得することができるのです。
よって、人はアイデンティティの喪失を最も恐れます。

しかしながら、老人ホームに入居する際、あるいはそれ以降、身体的・精神的に喪失が進行して、アイデンティティが失われ、自己決定ができなくなる可能性が高くなります。

そこで、身体的、精神的な喪失の過程において、自己決定を妨げるアイデンティティを失うリスクに対する備えが必要です。

E・H・エリクソンは、ライフサイクルの最終段階である老年期のテーマが、「絶望」に対する「統合」であるとした上で、喪失に対する人間的な強さが要請する英知を「死そのものに向き合う中での、生そのものに対する聡明かつ超然とした関心」であるとしています。

人生の最終段階は、喪失を諦めるだけではなく、喪失の進行と逆行して、自己を統合する、即ちアイデンティティーを完成させる段階でもあるのです。

想定されるリスクへの備え

海外旅行に行く前には、保険に加入したり、行き先によっては予防接種をするでしょう。

その理由は、今住んでいる日本においては必要がないものの、渡航先が日本ほど安全ではないことを、理解しているからです。 

狂犬病を例に取ると、日本で飼われている犬は狂犬病の予防接種をされている可能性が高いと言えますが、海外ではかならずしもそうとは言えません。狂犬病に罹ると死亡するリスクが非常に高いことを知っている、あるいは旅行会社等から案内されたので、命を守るために予防接種をするわけです。

さらに、渡航しようとする先で様々な感染症が蔓延していますから、渡航先ごとに必要な予防接種をすることになります。

海外旅行における予防接種は一例ですが、人間は将来のリスクを想定して予めそのリスクに対して備えをする能力を持っています。

海外渡航のような環境の変化は、今までに経験したことがないリスクとの遭遇ですが、人間は自分で経験していなくても、他人の経験を文字などから学習して備えることができます。

ポイントは、第一に他人の経験から学ぶ、第二に予め備えておく2点です。

損失回避性

備えは損失回避のために行います。

損失回避の行動の起点は、失いたくないという感情であり、その感情の起点は失うものの存在の認識です。従って、失うものがないと思っていれば、損失回避性は働きません。

今から自殺しようとする人が予防接種を受けたり、生命保険に加入することはありません。それは、失うものがないからです。

しかし、失ってはじめてその貴重さに気づくというのはよく聞く言葉です。

ここで注意が必要なのは、はじめからその貴重さに気づいていなかったというよりは、はじめは失うのが怖いと思っていたにも関わらず、時間の経過とともに、あることが当たり前となって、有り難みが希薄化した結果、「ある」ことが認識されなくなる状態です。

新築の住居、新車、結婚した配偶者、子どもなど、そうではないでしょうか。最初は大切にしますが、あることが当たり前になって有り難みがなくなってしまうのです。

ですから、「ある」ことに感謝する仕組みをもつ必要があるのです。

食事に手を付ける際の「いただきます」は、1日3回当たり前になっている食事に感謝する仕組みのひとつです。

老人ホームに転居して失うもの

老人ホームに入居することによって、今までの不自由の大半はそのサービスによってカバーされますが、そのトレードオフとして、失うものも少なくありません。

自宅から老人ホーム(様々な施設を集約して老人ホームと書きます)への転居は人生において、他にはないほど非常に大きな環境の変化だからです。

<老人ホームに転居して失うもの>

・ひとりでいることが難しい。

・専有する住居は、今まで住んでいた自宅よりは狭くなる。

・食事は個室ではなく、食堂で取ることになる。

・風呂は共同浴場になる。

・外出もままならなくなる。etc.

基本的には集団生活であり、好きな時間に食事や入浴をすることはできません。

以上のようなものは看護・介助を受けるトレードオフとして、失われたものの一部です。

老人ホームに入居する以前に失われたもの

・自分の足で歩くことができなくなった……

・神経痛がひどくなった……

・短期記憶が危うくなった……

・認知機能が低下した……etc.

ひとりで生活することを不可能にさせたのは、今まであった何か(複)の喪失に起因しています。残念ながら、誰もがいつかはそうなる可能性があります。

老化は、今まであったことを少しずつ奪っていきます。

アイデンティティと自己決定の喪失に備える

かつて老人ホームに転居する自分の姿を想像することができたでしょうか?
おそらく想像できた人は少ないと思います。

では、さらに加齢を重ねた後の自分の姿をどのように想像しますか?

海外渡航先における感染症の流行状況を調べるのと似ています。今後のリスクを予め確認して予防接種をしておけば、今あることを失うリスクを回避あるいは低減することができます。

老人ホームに入所する以上、近い将来、自分のアイデンティティーを見失って、自己決定ができなくなる可能性は少なくありません。しかし、むしろ、それを受け入れることができれば、自己決定する能力の喪失に備えて、予めプログラムしておくことができます。

予めアイデンティティと自己決定力の喪失を想定して備えておけば、それらが失われたとしても、結果として保持していると考えることができるのではないでしょうか。

アイデンティティを守るために、予め自己決定をしておく!

オンデマンドのウエビナー 「マンガでわかる 老人ホームに入居する際に備えておきたいこと」が参考になると思います。

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画竜点睛をしてアイデンティティを完成する

 老化に伴って失うものが多いのは事実ですが、失うばかりではありません。

エリクソンの言う通り、人生の第4コーナーを回りつつ、チャレンジしたいのが、アイデンティティーの完成です。

 

誰もが今までの人生において、様々な功績を積み上げてきたはずですが、まだ入れていなかった龍の目があるはずです。

今後の喪失に対するリスクへの対処をしつつ、画竜点睛をした後に、人生の出口から「満腹だ!」と言いながら出て行ったらよいではありませんか。